シリーズでお伝えしている「仙台都市圏が育む自然」、7月28日はその2回目です。仙台市の北東部、七北田川河口にある、宮城野区の蒲生干潟に注目します。地図で見ても決して広大とは言えない広さですが、実に様々な生き物が暮らす楽園でもあります。

仙台市宮城野区・蒲生干潟の朝です。穏やかな1日の始まりを迎える時もあれば…。

強い風に、さらされる時も。

七北田川河口の左岸に広がる蒲生干潟。国指定の鳥獣保護区特別保護地区であり生き物たちのオアシスです。

「蒲生を守る会」は毎月干潟を観察してきた、市民団体。高校の元教員・熊谷佳二さんは、蒲生を見守り続けて50年以上になります。

蒲生を守る会 熊谷佳二さん
「七北田川は泉ヶ岳の水神周辺を源流にしているんですけど、長さ40キロぐらいの二級河川。上流・中流・下流の環境っていろいろですし、河口になると海の水と川が出合う干潟の環境みたいに別な生き物がいる。本当に不思議ですよね。それが体感できるというところが、仙台の素晴らしさだと思います」

干潟は、鳥たちの楽園。「守る会」の調査では、これまで286種類もの鳥が確認されています。潮が引けば、無数のカニが姿を見せます。

こちらはチゴガニ。ダンスにも見える独特の動きは、求愛行動です。

干潟と川をつなぐ、導流堤。ここでも貝や魚たちの命が育まれています。

海に目を向けると餌を求めて、次々と鳥がやってきます。こちらはミサゴ。小魚を狙って急降下します。動物だけではありません。植物もまた根を張って生きています。

海の生き物、川の生き物、そして干潟の生き物。「守る会」が見つめてきた蒲生干潟ですが、東日本大震災で大きな被害を受けました。

流れ着いたがれきが14年経った今もまだ残る中、干潟の生き物たちはそこにも息づいています。

蒲生を守る会 熊谷佳二さん
「震災発生の16日後だったかな…自転車で川沿いにここにやって来ることができました。でもびっくりしました、蒲生の町はなくなっていて、そして干潟も全く生き物の気配が感じられない環境になってしまっていたんですね。

でも諦めないで、会の仲間たちとずっと震災前から続けていた1カ月に1回の蒲生の調査をすぐに再開しよう、やってみようということで、4月、5月と続けていたらですね、5月に入った時にはびっくりするような現象がありました。

“沈黙の干潟”が呼吸を始めていたんです。直後は見られなかった生き物の巣穴…貝とかゴカイとかカニだと思うんですけど、そういうたくさんの巣穴が作られていて、その中から一部からは水が吹き出していたんですね。

水が吹き出していたってことは明らかにその中に生き物が、干潟の動物が中にいて水を動かしている、息づいているっていうことが確認できたんですね。本当にうれしかった。

その干潟というのはどういう価値があるのかというと、多くの生き物がいる生命の宝庫、あとは渡り鳥の楽園ですね。そういう自然の宝庫という価値があります。

そういう所に子供たちが来ると、自然博物館として自然を学ぶことが、本当にこんな大都市・仙台から近いところで、本当の自然に接して、生き物と触れ合うことができるという大きな価値があります。

やっぱり未来の子供たちに自然を残すのが、今生きてきた私たちの義務だと思っています」

決して広大とは言えない蒲生干潟。そこに多くの生き物たちが、たくましく息づいています。

仙台放送
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