福井県敦賀市にある「水島」は、美しい海と白砂ビーチから「北陸のハワイ」とも呼ばれています。この水島をモチーフにしたクラフトビール「MIZUSHIMA BLUE|北陸のハワイ」を開発・販売しているのが、敦賀市内にある旅行会社・株式会社マップトラベル。「ハワイ旅行推し」の会社でもあり、ハワイ州観光局認定のサテライトオフィスでもある同社が「北陸のハワイ」を擁する敦賀から贈るクラフトビールに託したハワイへの思いと、地元・敦賀への思いを、代表取締役社長の大道さんと「MIZUSHIMA BLUE|北陸のハワイ」開発リーダーの疋田さんに聞きました。
“ハワイ推し”の旅行会社としてブランディングに取り組む
―貴社の沿革や事業内容について教えてください。
大道:設立は1995年で、私の父がおこした会社です。JTBの総合提携店として、個人や団体向けの旅行手配を主軸事業としていて、国内外の旅行を扱っています。基本的には県内から出発する方向けのご案内をしていますが、近年は県外からの観光客やインバウンド客向けに「着地型観光」のプランを提供することもあります。
海外旅行も取り扱っていますが、なかでもハワイ旅行を押し出すようになったのはここ10年ほどのことです。私は元々別の業界で働いていたのですが、父のあとを継ぐためにJTBで修業し、約10年前にマップトラベルへ入社しました。JTBでハワイの魅力はよく知っていましたし、当社でも海外旅行をされる方の半分ほどがハワイに行っているというデータもあり、それなら「県内で一番、ハワイに強いお店にしよう」と考えたんです。
当社のスタッフは全員がハワイ州観光局の定めるプログラムを受講し認定を受けたスペシャリストで、サテライトオフィスとしての認定も受けています。旅行やハネムーンなどでハワイへ行かれる方へのご案内はもちろん、市内や県内で行われるハワイ関連のフェスやイベントにも積極的に参加し、PRに取り組んでいます。
―ハワイの魅力は、どのようなところにあると感じていますか。
大道:景色や気候、においなど、全てが心を穏やかにしてくれるところでしょうか。それから、自然のなかに信仰の対象があるところは、なんとなく日本人と通じるところもあって。日本にも「八百万の神」という考え方がありますが、ハワイでも山や海に神様がいて、そこで人間と共存しているような感じがあり、根底が似ている気がしています。
北陸新幹線の敦賀駅開業に合わせてクラフトビールを開発
―貴社では旅行業以外にも様々な事業を展開されていますが、これらの事業展開の背景にはどのようなことがあるのでしょうか。
大道:大きなきっかけには、2020年からの新型コロナウイルス流行があります。緊急事態宣言の発令やそこから長く続いた外出自粛など、旅行業界には大きな打撃となりました。社員は出勤していてもお客さまがいらっしゃらないので、やることがないんですね。何かできないかと考え続ける日々でした。が、この時期の国内での人の動きについて考えてみると「地元に帰りたいけれど、帰れない」という人もいるのではと思いました。そこで、遠方に住む地元出身者向けに空き家の巡回やお墓の清掃代行といったサービスを打ち出してみたところ、かなりのニーズがあることがわかり、ビジネスとして現在も継続しています。
また、当時コロナ関連で設置されていた企業向けの補助金なども活用してオリジナルグッズを作ったり、それを販売するECサイトを作成したりと、旅行手配以外に収入源となる活動を模索していました。オリジナルキャラクターの「HENOHENO MAPPY(ヘノヘノマッピー)」が生まれたのもこのころで、グッズやLINEスタンプなども作成しましたし、思った以上に受け入れられていて、私たちとしてはこのころにまいたタネがしっかりと芽を出してくれたなと感じていますし、現在まで続いている事業がほとんどです。旅行業は外的要因の影響を受けやすいものでもあるので、他の事業で少しでもカバーできるといいなって。
―「MIZUSHIMA BLUE」開発の経緯についても教えてください。
大道:水島は「北陸のハワイ」とも呼ばれていて、ハワイ推しの旅行会社としてもプッシュしているスポットです。コロナ禍にあって海外に行けない時期が続きましたが、「北陸にもハワイのようなところがある!」と、水島とHENOHENO MAPPYのコラボグッズを毎年作っていました。
MIZUSHIMA BLUEが誕生したのは2024年3月で、北陸新幹線の敦賀駅が開業するタイミングのことでした。敦賀に新幹線が来る、百年に一度のビジネスチャンスだぞ!と気合が入りましたね。
疋田:そんなタイミングで、何を作るべきか?と大道と話し合いを重ねていきました。そこで浮かんだのが「ビール」。ハワイにはいろいろなクラフトビールがあるんですよ。それで、水島の名を冠したクラフトビールを出してみたらどうだろう?と、プロジェクトがスタートしました。
ビールを売り出すことにした理由にはもう一つ、敦賀から新たな名産品を生み出したいという思いもありました。新幹線の駅ができることで、訪れる人は増えるはず。そこで手にしてもらえるものとして、敦賀が誇れるモノを増やしたいという気持ちも強かったですね。
美しい青色とフルーティーな味わいで女性に人気!
―MIZUSHIMA BLUEは、その名のとおり青い色が印象的ですね。
疋田:大道と「クラフトビールを作ろう」と決め、せっかくなら面白いものを……と考えたときに浮かんだのが、水島の青い海でした。その海をイメージして「青いビールはどうでしょう?」と提案したところ「インパクトもあるし、それでいこう!」と即決でした。もちろん青いビールを作るのは、普通よりも難しいものになります。それに協力してくださるブルワリーさんを探すことになりました。
青いビール自体は国内でもいくつか存在していて、それらを取り寄せて味を確かめたり、ブルワリーさんに「どうすればできるか」を教えていただきながら検討していきましたが、通常のビールに青い色素を加えると当然ながら黄色と青が混ざって緑色になってしまう。いかに黄色を薄くするかが成功のカギですが、なかなか満足のいく仕上がりに到達できませんでした。
その過程で出会ったのが、石川県の金澤ブルワリーさんです。何社かに相談し、実際に試作もしていただいた中で、コンタクトをとった段階から前向きに話を聞いてくださり、また同じ北陸に拠点を置く企業ということで、一緒に北陸を盛り上げていけたらという思いもあって、金澤ブルワリーさんとのタッグが誕生しました。
完成したMIZUSHIMA BLUEは、ハワイのトロピカルフルーツを思わせる香りのビール。アルコール度数も低めで、ビールとしては少し変わり種かもしれません。
大道:パッケージデザインは、ハワイ在住経験もあるイラストレーターのキム・シエルベックさんにお願いしました。ボトルには海に浮かぶ水島、3本セットのボックスにはハワイと水島をイメージしたモチーフをあしらっていただき、キムらしいポップでカラフルなデザインがとても気に入っています。
―MIZUSHIMA BLUEを口にした人からの反応は?
疋田:関西や北陸のイベントなどで試飲会をしていますが、女性にとても人気です。特に、ビールが苦手で……と敬遠される方におすすめしてみると「飲みやすい!」と好評なことが多いですね。いかにもビールらしいキレ味などはないのですが、そこが苦手だったという人にはMIZUSHIMA BLUEのフルーティーさがさっぱりしていておいしい!と喜んでいただけています。外国人観光客の方にも気に入っていただけることが多いです。
実はMIZUSHIMA BLUEには、敦賀の名産品である「おぼろ昆布」の端材を隠し味にしているんです。敦賀から新たに生まれる名産品として、敦賀のものを使いたいという思いからですが、実際に飲んだ方から「ほのかに海の香りがする!」と言われたこともあるんですよ。
ハワイとつながり、そして市民の誇りになれるような商品に
―MIZUSHIMA BLUEの売上は、一部をマウイ島に寄付されているのですね。
大道:はい。これまでにも水島コラボ商品の売り上げは水島の清掃活動の一部に寄付していましたが、MIZUSHIMA BLUEの開発に取り組んでいた2023年にマウイ島の山火事が起こり、大きな被害を受けたと聞き、その復興に使ってもらえたらと考えました。2025年5月にはマウイ島を訪問し、被災したラハイナの様子を見せていただいたり、市長に直接寄付金をお渡しさせていただきました。「ハワイ推し」の当社としても、さまざまな魅力にあふれたマウイ島の一日も早い復興を願っていますし、継続的な支援をしていけたらと強く感じました。
―水島は、敦賀とハワイを結ぶ架け橋のような存在ですね。今後の展開予定はありますか。
疋田:MIZUSHIMA BLUEをハワイでも展開できたらと考えています。ありがたくも、ハワイ在住の方から「MIZUSHIMA BLUEを販売してほしい・自分のお店で扱いたい」というような声もいただきますが、アメリカと日本では酒類に関する法律が異なり、MIZUSHIMA BLUEをそのまま販売することができないんです。そこで新商品としてノンアルコールのドリンクを開発し、ハワイでも扱えるようにしていこうと計画しているところなんです。MIZUSHIMA BLUEがハワイでも手にできるようになれば、水島のブランディングにもなるし、価値向上につながればうれしいですね。「北陸のハワイ」と呼ばれている場所が敦賀にあり、長く多くの人に親しまれる場所になればと思っています。
大道:ハワイというとても魅力的なまちと敦賀が何らかの形でつながれたらと思っています。友好都市や姉妹都市という形をとれたら一番うれしいですが、例えば人同士の交流なんかでもいいなと思っていて。私は敦賀の出身で、このまちの雰囲気を感じながら育ってきました。「ここには何もない」「新幹線が来ても変わらない」と感じている人がいるのも事実です。でも、確実に訪れる人は増えているし、観光客を相手にしたお店も新しく生まれています。ハワイとのつながりを大切にしながら、「北陸のハワイ・水島」をもっと押し出して、敦賀の人のシビックプライドを醸成していくことも、私たちのミッションだと感じています。
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