山形県最高峰・標高2236メートル、富士山に似た美しい山として“出羽富士”とも呼ばれる鳥海山。その麓に位置する遊佐町に、山と川と海に囲まれた美しい自然と時を1樽に閉じ込める小さな蒸留所「月光川蒸留所」が2023年に誕生した。まだ販売できるウイスキーがないその蒸留所が、2025年、新たに始めた施設の「見学ツアー」のねらいと今を取材した。

2025年1月に始まった「見学ツアー」
遊佐町にある「月光川蒸留所」は、小規模なウイスキー蒸留所として2023年に誕生した。
大麦麦芽を原料に、単一の蒸留所で作られるシングルモルトウイスキーの販売を2027年から予定していて、毎日仕込みが行われている。

そんな月光川蒸留所で始まったのが「見学ツアー」。
月光川蒸留所営業部・塚形直記さん:
ウイスキー蒸留所が日本でも100社を超える段階になっている。
我々の特徴をどうアピールするかを考えた時に、実際に蒸留所に足を運んでもらって、「ウイスキーづくりの現場を見てもらうことが、一番ファンになってもらえるのではないか」と思い、見学ツアーを始めた。

ウイスキーの販売はまだ始まっていないが、自社の特徴の発信のため、2025年1月から見学者の受け入れを始めた。
見学は企業・一般を問わない。

酒のプロも気になるウイスキーづくり
ある日、この蒸留所を訪れていたのは、隣県・宮城で業務用酒類の卸売販売を手がける会社のスタッフ4人。
吉田酒店・吉田直史取締役は、「我々仙台の酒販店で、隣の山形でこうした活動をしていることを知って勉強させてもらおうと来た」と話してくれた。

吉田酒店は仙台市内の飲食店600店と取引があり、扱う酒はワイン・ウイスキーなど1万点を超えるという。
この日は会社のラインナップに“山形産ウイスキー”を加えたいと、仙台から3時間かけて遊佐町の蒸留所を訪れた。

職人がウイスキーの製造工程・こだわりを紹介
「この麦芽をセッティングして開始A・Bのボタンを押すだけという形」「こちらはきょう仕込んだ麦汁・もろみ。3日で発酵するので、2日目のいま泡がボコボコ出ている状態」と説明するのは、月光川蒸留所・塚形直記さん。

ウイスキー製造に使う大麦の破砕から麦汁の作り方、その後の蒸留の過程まで、月光川蒸留所のスタッフが詳しい説明を行う。

ウイスキーの仕込みの現場は夏場、高温になり、見学をする人はその場にいるだけでも暑くて大変だが、仙台から訪れた酒販店のプロたちは目の前で作られているウイスキーの出来が気になるよう。

“作り手の顔”が見えることで伝わる想い
最後は試飲の時間。
3年以上、樽で寝かせないと名乗れないジャパニーズウイスキー。
2023年から製造を始めた月光川蒸留所には、正式なウイスキーはまだ存在しない。
そのため試飲では、「ニューポット」と呼ばれるウイスキーの原酒や、ミズナラなどの素材でできた樽に仕込んだ熟成中の酒などが提供される。

4人はその深い味わいを確かめ、月光川蒸留所でつくられるウイスキーを想像していた。
吉田酒店・小野誉幸さんは「ミズナラ(樽)の加水した時のふくらみが良くて、樽の味わいがおいしいと思った」と話し、佐野一樹さんは「小さいミニマムでウイスキー生産をやるからこそできる酒へのこだわりがすごく見えて、新鮮な気持ちだった」と話してくれた。

吉田酒店・吉田直史取締役:
実際に作っている人の顔が見えると、その人たちの思いなどストレートに伝わってくる。
味わいや思いがよりストレートに伝わると感じた。

<見学ツアー情報>
●開催日は月・水・金・土が基本
●事前予約制で定員6人まで
●月光川蒸留所のホームページから申込みができる
●20歳以上の人は1人5500円(蒸留所の見学・試飲・見学者限定ギフト)

月光川蒸留所製のウイスキー販売は2027年からで、現段階で商品はないが、発売前の蒸留所を体験できるのは今だけ。
最寄りの庄内空港からは車で30分。
鳥海山に抱かれた遊佐の地で育まれるジャパニーズウイスキーの“始まり”をぜひ体感してみてほしい。
2027年のウイスキー発売が心待ちになること間違いなしだろう。
(さくらんぼテレビ)