なんとなく気持ちがふさぐ。睡眠がうまく取れず、日中もだるさが続いて食欲が湧かない。そんな不調を抱えて病院を訪れたが、「体に異常なし」。なす術なく、途方に暮れたという経験はないだろうか。そんなときに頼りになるのが、心療内科だ。精神科と同じ分野の病院だと思われがちだが、得意分野が異なることをご存知だろうか? 両者の違いや心療内科による治療について、心療内科専門医のもりしたクリニック院長・森下克也さんが解説する。

ストレスによる身体の不調を扱う

みなさんの中に、肩こりやだるさ、頭痛、めまい、微熱など「なんとなくの不調」を感じている人はいるでしょうか。明らかな病名は付かないけど、健康とは言いがたい。それらの症状は、「不定愁訴」と呼ばれます。そんな不定愁訴が、心理的な問題から生じる場合があることをご存じですか?

心理的な問題とは、つまりストレスです。現代社会において、多少のストレスは避けられません。だからといって、ストレスを自覚せず「最近、忙しいから」「もう歳だから」と不定愁訴を我慢し続けると、胃潰瘍や過敏性腸症候群、過呼吸症候群などの疾患に至る場合さえあります。

ストレスが深刻な病気の原因になることもある(画像はイメージ)
ストレスが深刻な病気の原因になることもある(画像はイメージ)
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心療内科が扱うのは「ストレスが原因で起こる身体の不調」です。ストレスは体の機能を調整する自律神経に影響を及ぼします。自律神経は、戦闘状態を作る交感神経と、リラックス状態を作る副交感神経に分けられますが、ストレスを受けすぎると交感神経が過緊張状態になる。それが続くと、体に不調が生じるのです。

たとえば、ストレスを受け続けると胃酸が過剰に出て、胃が荒れる。それが続けばやがて、胃潰瘍になってしまう。こうした、心と体のつながりを診るのが、心療内科の役割です。だからこそ、ストレスの早期症状である不定愁訴の段階で、心療内科を受診してほしいのです。

精神科との違いは?

心理的な問題から起こる病気というと「精神科とは違う?」と、疑問を持つ人もいるでしょう。心療内科と精神科には重なる領域もありますが、同じではありません。心療内科の専門的な知識と技能を必要とする領域もあれば、精神科の医師でなければ十分な治療のできない領域もあります。