参議院選挙について詳しくお伝えしていく「もっと投票の前に」。
15日は「消費税」について見ていきます。
各政党、消費税について様々な公約を掲げていますが、それぞれのスタンスを見ていきます。
消費税を「維持」していく側と「減税」していく側があります。
自民党・公明党は消費税を「維持」していく側。
自民党は党内に減税論もありますが「税率キープ」、公明党は「食料品減税を検討」。
立憲民主党は時限的に食料品0%(1年)、維新の会は時限的に食料品0%(2年)。
国民民主党は消費税を時限的に5%。
社民党、日本保守党は食料品について恒久的に0%。
共産党はまず5%・将来的に廃止、参政党は段階的に廃止、れいわ新選組は廃止に向けていくというスタンスになっています。
「イット!」では15日、3人の経済のスペシャリストに話を聞きました。
まず1人目は、「財政重視派」で「減税せず維持」という森信茂樹氏です。デジタル庁・内閣府の有識者会議の構成員をされています。
2人目は「限定減税派」で「食料品の減税」と考えている、第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣氏です。
そして3人目が、「減税派」の経済学者で上武大学教授の田中秀臣氏です。
それぞれ各政党の消費税に関する公約を見ていただき、見解をいただきました。
まず最初に、「自民党が掲げている税率をこのまま維持していったらどうなるのか」についての見解です。
(税率維持の場合)
財政重視派・森信茂樹氏:
現在の税率を維持するというのは正しい政策だと思う。ただ給付は私はあまり効果がないと思う。ああいうバラマキ的な給付をやっても効果ないと思う。
限定減税派・永濱利廣氏:
消費減税してしまうと、食料品以外については生活水準の高い人たちに恩恵が行きすぎてしまう。さらに言うと財政が悪化しすぎてしまうので、期間限定の電子クーポン券、電子商品券みたいなものを国を挙げてやった方が、給付金よりも振り込み手数料かからず、消費の活性化効果も高いのでは。
減税派・田中秀臣氏:
現状維持というのはまったくお話にならない。経済全体で5兆円ぐらいのお金の不足があるので、それを解消する上でも消費減税は非常に有効な政策。2%ぐらい減税することが5兆円の穴埋めに該当。そういった政策をやるべき。
税率の維持に関しては三者三様でしたが、続いて「税率を5%に下げた場合」の見解を聞きます。
(税率5%に減税の場合)
財政重視派・森信茂樹氏:
日本経済は大変な混乱をすると思う。“トリプル安”円安・株安・債権安、まぁ金利高。3年ぐらい前、イギリスの“トラスショック”と言われてて、トラス首相が財源なく減税を打ち出して、イギリスでトリプル安のポンド安・金利高・株安が生じた。
限定減税派・永濱利廣氏:
一気にやってしまうと、国債市場と金融市場の混乱が生じる可能性。ちょっと非現実的。個人的には食料品の消費税率を段階的に毎年2%ずつ、もしくは4%ずつ下げていき、将来的には食料品の消費税率を0%に持っていく政策が望ましい。
減税派・田中秀臣氏:
消費税を減税すると良いことは、低所得者層に恩恵があること。一律5%というのは、予算規模で10兆円をはるかに超えてしまいます。2%、多くても3%ぐらいの減税(消費税8%~7%)が今の日本経済には妥当だと思います。
さらにその先、「食料品の税率0%、あるいは消費税全体を廃止」の場合はどうなのでしょうか。
(食料品0%・廃止の場合)
財政重視派・森信茂樹氏:
5%でも“トラスショック”が起きかねないのに、廃止すれば必ず起きる。代替財源がない限り。野党が消費税の減税の方向で議論してることが悪影響を与えて金利が上がっている、まだ選挙が終わってない段階で。
限定減税派・永濱利廣氏:
廃止してしまうと、おそらく国債の格下げだったり、より大きな金融市場の混乱が発生する可能性がある。それなりに社会保障の財源に使われているというところからすると、廃止という方向は非現実的だと思う。食料品0%といってる政党がいるが、期間限定になってしまうと経済の押し上げ効果は限定的で、逆にいきなり0%に下げると外食産業の影響なんかも懸念される。
減税派・田中秀臣氏:
食料品0%をずっと続けるとなると、かなり財政的な負担がくると思う。(消費税廃止は)デメリットの方が大きい。“大胆なことを言えば(国民に)うける”という経済政策に対する誤解を国民に与えるということが最も大きい。
木村拓也キャスター:
経済のプロでも様々な見解があると思いました。やはり、下げた場合に日本にどういう影響があるのかを3人とも話していました。
「消費税廃止」は3人とも×になっていますが、中にはこれを推し進めていくという経済学者もいます。
「MMT(現代貨幣理論)」というもので、主張としては「通貨発行権のある国は財政赤字で破綻しない」「インフレにならない限り国債発行は問題ない」「財源確保の徴税は不要」と訴える学者もいます。
宮司愛海キャスター:
山口さん、こうやって見ていくと、何かを立てると何かがマイナスになったり、なかなかバランスをとるのも難しいのかなというふうに思いますが、日本経済にとってどういった選択肢がいいと思われますか?
SPキャスター・山口真由氏:
恒久的に消費税を廃止するのは難しいとしても、物価高対策で食品にかかる税率を時限的に上げ下げするというのは海外でも行われていますよね。景気浮揚も考えるなら食料品に限らないのももちろんあり得ると思いますが、ただしこれは逆進的で、富裕層優遇になるという批判はあると思います。ただ思考停止して絶対に消費税減税はできないっていうふうに考える必要もないのかなと思います。
宮司愛海キャスター:
ただ、このことを受け止めて国民としてどういうふうに判断すればいいかとても難しいですよね。どうすればいいと思われますか?
SPキャスター・山口真由氏:
数年前まで議論にもならなかったことが今、私たちは選択するオプションが出てきている。だから専門家の意見を聞いて、自分たちが判断して日本が岐路に立っていることを実感するのは大事かと思います。
青井実キャスター:
専門家ですら色々な考え方があるというのは、暮らしている我々も色々な考え方がある。いろいろ各党の主張をしっかり見ていく必要がありそうです。