6月に福島テレビと福島民報社が行った世論調査で、投票で重視することを尋ねたところ半数が「物価高対策」と回答した。特に主食であるコメの価格高騰は、私たちの食卓だけでなく生産者を取り巻く環境にも大きな影響を与えている。政治に求められる「農業の未来」とは?

■養鶏場にも米騒動の余波

2000羽を超える会津地鶏が飼育されている、福島県会津坂下町の養鶏場「株式会社GAizu信(がいずしん)~会津の地鶏やさん~」。コクやうまみが濃縮された良質な卵が生産されるこの環境にも、「令和のコメ騒動」の波が押し寄せていた。

この養鶏場では、ニワトリが良質な卵を産むように、低カロリーでありながらも満腹感の高い「籾米(もみまい)」=籾殻(もみがら)が付いたコメをエサに混ぜていたが、契約していた農家から「籾米」の生産を減らすと連絡を受けた。生産を減らした分は、価格が高騰している食用米へと転換されるという。
代表取締役の佐藤信行さんは「農家も物価高とかもあって色々経費がかかるなか、やはり儲かる方を選ばざるを得ない」と話す。

「籾米」の代わりに蕎麦の殻を混ぜるなど試行錯誤を迫られるなか、政治には食用米だけでなく「コメ騒動」がもたらすあらゆる産業の未来を考えてほしいと訴える。
「数年先を見据えた、ある程度骨太の施策をしっかり考えて。食べる米も飼料用米も含めて安定的に手に入るような農家へのバックアップをしてもらいたい」と佐藤さんは語った。

■米農家 補助金ありきの赤字営農

一方「未来への願い」は、食用米の農家からもあがっている。福島県内有数の米どころ湯川村で食用米を育てる鈴木正之さん(72)は、40℃近い気温のなか、田んぼの草刈りに追われていた。「こんな風にして日頃努力しながら、暑い日でも作業しなくてはならない。結構手間かかる」と話す。

大事な稲の栄養を吸い取り、カメムシなど病害虫の発生源にもなる雑草は、定期的に刈り取りが必要。また、コメの収穫までは土の乾きや稲の成長具合を観察し、水の量をこまめに調整しなくてはならない。
鈴木さんは「農家は生産費よりも安い値段で売っていた状態。ですから農家としては大変な経営状態だった」と訴える。

鈴木さんの場合、60キロのコメを生産するのに約1万6000円の生産コストがかかっているうえ、おいしいコメのためには手間暇を惜しむことはできない。
一方、取引価格は1993年産の2万3607円から30年間低調で、補助金ありきの赤字営農を続けてきたという。

日本の主食・コメ作りが魅力ある、選ばれる職業として生き残っていくために。鈴木さんは「日本国内で生産を賄えるような制度と言うか、農家が安心して暮らしていけるような制度にしてほしい」と語り、未来を見据えた制度作りを望んでいる。

■福島選挙区 立候補者の考え

「コメ騒動」に代表される物価高の問題だが、私たち一般の消費者はもちろん、生産者の生活も守るバランスが必要だ。
最新のコメの価格の推移をみると、6週連続で低下していて約5カ月ぶりに3600円台となったが、まだまだ消費者からすれば高い。一方、生産者からすれば今後の価格下落への不安もあると思う。

福島選挙区に立候補している5人は、備蓄米放出を含むコメ騒動への対応について、越智さんと遠藤さんが「賛同」、森さんと石原さんが「どちらかといえば賛同」、一方で大山さんが「賛同しない」としている。

物価高をめぐっては「消費税減税」への是非も大きな焦点となるが、大山さんと遠藤さんは減税に「賛同」、越智さんと石原さんは「どちらかと言えば賛同」、「減税より給付」を掲げる自民党の森さんは「どちらかといえば賛同しない」としている。

この参議院選挙では、多くの政党・候補者が物価高への対策を公約に掲げている。投票日は7月20日、当日投票に行けない人は期日前投票を活用して、皆さんの気持ちを貴重な1票に託してほしい。

福島テレビ
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