任期満了に伴う仙台市長選挙が7月20日に告示されます。すでに現職の郡市長含め4人が立候補を表明し、選挙戦は郡市政の評価も大きな争点です。2期8年の成果と課題、そして仙台市民が求める市政について考えます。

仙台市 郡和子市長
「懸命に走った8年だったと思う。命と暮らしを守るような、誰もがその人らしく輝くまちを目指して取り組みをしてきた」

7月8日、市長選前最後の定例会見で自身の8年をこう振り返った郡和子仙台市長。

前回2021年の選挙で公約に掲げたのは「子どもたちを守る」「子育てを応援」「ワクワクする街づくり」「防災環境都市を目指す」など10項目でした。

なかでも市長就任以来、最重要課題の一つとしてきたのが、いじめ対策。郡市長は市を挙げての取り組みで一定の成果をあげていると強調します。

仙台市 郡和子市長
「社会全体でいじめをなくすという取り組みを進めてきた。いじめの解決件数は全国の水準を上回っている」

しかし、市議会からは成果を疑問視する声もあります。

市民フォーラム仙台 加藤けんいち市議
「市民意識調査でいじめや虐待の防止など、『子供たちが安全に安心して育つ環境作り』の項目は、2.37と残念ながら全調査項目で最低」

仙台市が毎年行っている市民意識調査では、いじめ対策を含む「子どもたちが安全に、安心して育つことができる環境づくり」への評価が4点満点中、2.37と全項目の中で一番低い評価でした。

また、2018年にいじめを苦にした母親が小学2年生の子供と心中したとみられる事件で遺族が求めた再調査を行わないとしたことや、複数の案件で「いじめ重大事態」認定までの対応に遅れがあるなど、この4年の間でも市の対応には疑問や批判の声が上がりました。

この4年間特に目立ったのが「世界から選ばれるまち」という方向性。

ポケモンGOフェストやG7科学技術大臣会合など国際的に仙台の知名度を上げる機会がありました。

しかし、これにも議会から批判的な意見が…。

日本共産党仙台市議団 すげの直子市議
「この4年間で市長の『世界から選ばれたい』思いがどんどん強まっていることは認識した。市民一人一人がこのまちに暮らしてよかったと実感できる街づくりに注力することが必要」

市長の答弁は…。

仙台市 郡和子市長
「市民一人一人の声が市政の原点にあるとの思いで、職員からの報告や、多様な立場の皆さんと直接会い、対話を重ねながら思いを受け止め、施策につなげてきた」

市民は市政に何を望んでいるのか街で聞きました。どの年代からも聞かれたのは「地域の活性化」です。

30代
「フォーラスが閉まっていたり、さくら野百貨店も再開していない。うまく活用できていないと感じる」

JR仙台駅西口では旧さくら野が閉店したまま。営業を終えたEDENや商店街の空き店舗も先が見えてこない現状があります。

加藤義永刃物店 加藤義靖社長(86)
「地元がしっかりしないと。世界に目が向いてしまってもね…」

青葉区一番町で100年続く老舗刃物店の3代目社長、加藤義靖さんは世界に目を向ける前に地域の活性化に力を入れ、にぎやかな街を作ってほしいと話します。

加藤義永刃物店 加藤義靖社長(86)
「仙台市長には仙台市のことを大いに考えてもらいたい」

地域活性化について専門家はこう分析します。

七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友主席エコノミスト
「再開発が進まないのは、仙台の商圏の魅力や、ポテンシャルが低く見られている。仙台が吸引力を失うと、東北全体の衰退につながりかねない。『オタク文化』でもいいが、仙台と言えばこれといったものを打ち出していくことが、都市間競争力を高め、魅力を高めることにつながる」

街の声で最も多かったのが子育て支援の充実でした。

60代
「子供には、これからの未来を担ってもらうので、大事に育ててもらって、親御さんの支援をしてもらいたい」

30代
「周りの県は無料遊び場あって、暑い時も過ごしやすいが、仙台市は少ない」

30代
「子供のいる世帯がお金を使いやすくしたり、2人、3人と育てやすい地域になればいい」

仙台市の子供の医療費助成は2年前から中学3年生までは所得制限がなくなりました。来年度からは高校3年生までが対象となり一部負担金もなくなります。

また、保育所に入れない「待機児童」が4年連続でゼロ、男性の育休に対する中小企業への奨励金など出産後の子育て支援策も広げています。

猛暑や悪天候でも子供を遊ばせることができる屋内遊び場の建設は市民の声を受けて決まりました。

子育て世代の負担軽減は拡充されていますが、市民からは県内の他の自治体と比べ、まだまだだという声も聞かれます。

例えば隣接する富谷市が18歳までの医療費や給食費までも無償化していることを考えると、仙台市にさらなる充実を求める声が上がるのも無理はありません。

記者リポート
「109万人が住む仙台市。市政に望む声は様々です。市民が満足できるまちづくりとはどのようなものなのか。リーダーの手腕、有権者の目、どちらも問われます」

仙台放送
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