「中国ダービー」のパブリックビューイングですら”見たくても見られない”J1昇格で平均入場者数は昨季の約1.6倍に

今、関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。7月9日は、サッカーJ1、ファジアーノ岡山のホーム「JFE晴れの国スタジアム」の収容人数の課題について篠原記者がお伝えします。

(篠原聖記者)
「2025シーズン、ホームで行われたリーグ戦は12試合で、主にファジアーノを応援する人が観戦するホームエリアのチケットは全て完売しています。平均入場者数は1万4461人と、J2だった2024シーズンの約1.6倍に膨れ上がっています。

特に7月5日の「中国ダービー」では販売開始からわずか18分で完売し、スタジアムには収容上限いっぱいの1万5451人が来場しました。ホームスタジアムに対する収容率は平均で93.4%とJ1・20チーム中トップの数字です。

こうした中、ファジアーノは「中国ダービー」でスタジアム場外でのパブリックビューイングを初めて実施しました。しかし、こちらにも参加の申し込みが殺到し、見たくても見られない人が多い現状が「見える化」されました」


「この場を借りておわびしたい」岡山初の「中国ダービー」PV会場でチームの会長が”異例の謝罪”

7月5日、サンフレッチェ広島との「中国ダービー」。2025シーズン最多となる1万5451人が来場し「JFE晴れの国スタジアム」は熱狂の渦に包まれました。

この盛り上がりはスタジアムの外にも…

ファジアーノが初めて実施した無料のパブリックビューイングには約2000人が参加、中には紫のユニホームを着た人の姿もありました。

(広島サポーターは…)
「せっかくなら熱気を現地で味わいたいと思い来た」
(岡山サポーターは…)
「家で見るのと(サッカーが)好きな人たちと一緒に見るのとは全然違う。できればスタジアムに行きたかった」

鳴り物を使った応援は禁止で、スタジアムの中とは違う雰囲気での観戦です。

試合が始まる前、ファジアーノの北川真也会長は謝罪の言葉から挨拶を始めました。

(ファジアーノ岡山 北川真也会長)
「本来であれば、この岡山で初めて行われる中国ダービーをスタジアムで観戦してもらいたかったが、PVという形になり、非常に残念だし、この場を借りておわびしたい」

会場に入れないサポーターのためのPV開催も定員オーバー 抽選に当たった人も当日の行動制限に「やっぱりスタジアムがいい」などの声

Jリーグによりますと、ホームゲームの会場の外でパブリックビューイングが行われるのは珍しく、今回、実施するまでには紆余曲折がありました。

当初、試合の臨場感をより感じてもらおうとスタジアム近くの芝生エリアでの実施を予定していましたが、整理券の申し込みが殺到。安全面を確保するため急遽、約300メートル離れた補助陸上競技場に場所を変更し、事前の抽選を行いました。

しかし、そこにも約6000人の応募があり、会場に入り切らない人が多いという課題の解決には至りませんでした。

(岡山サポーターは…)
「やっぱりスタジアムが良い。全然違う。(PVは)応援の声は出せないし、タオル巻きの応援ができない」
「とても楽しかったが、スタジアムでみんなで応援できる方が一番良いので、新しいスタジアムができるのを願っている」

(ファジアーノ岡山 北川真也会長)
「極力スタジアムの近くで観戦してもらいたかったが、募集をしてみれば6000人の応募があり、ニーズがあると認識した。見られない状況の中でも楽しんでもらえる状況を作っていきたい」

アウェーエリア「わずか3分」で完売「経済波及効果面でも収益機会を逸している」との指摘も

(篠原聖記者)
「今回の中国ダービーではチケットが18分で完売していますが、約2300席のアウェーエリアに限定するとわずか3分での完売です。

ファジアーノによりますとチケット購入サイトには3分間に8500件のアクセスがあったということです。1件当たり平均2.4人分のチケットを購入するというデータもあり、つまり広島サポーターが2万人以上来場する可能性があったという計算になります。

2025年3月に年間54億円というJ1昇格の経済波及効果を発表した日本政策投資銀行も「収益機会を逸している」と分析しています。

こうした中、新しいスタジアムの整備に関する議論が進んでいて、6月、署名活動が始まりました」

「お互い良いスタジアムでダービーができれば」と広島サポーターも署名で後押し・・・新スタジアムの整備求める署名活動も始まる

「署名活動を行っております!もしよろしければご協力よろしくお願いいたします」

署名活動を行ったのは県内のプロスポーツチームやサポーターの有志などで作る、「新スタジアムの整備を推進する会」です。6月26日からホームページで署名を集めているほか、県内全域で街頭活動を行っていて、これまで(7月9日現在)に6万4542人が署名しています。

(署名した広島サポーター)
「お互い良いスタジアムでダービーができれば」
(署名した岡山サポーター)
「地元にサッカーで盛り上がるスタジアムができることは地元住民としてもうれしいことだし、ぜひできてほしい」

会は、署名の数の目標を掲げていませんが、2010年にファジアーノの専用練習場の新設を求めて行われた署名活動では同じ3カ月間で約28万人分が集まり、整備につながりました。

(新スタジアムの整備を推進する会 河野良亮さん)
「県内全域で活動することに意味があると思う。広島・長崎に多目的の良いスタジアムができている。岡山の今のスタジアムも思い入れはあるが、県民のシンボルとなるようなスタジアムをみんなで一緒につくっていきたい」

「エディオンピースウイング広島」では約37万人分の署名が開業への後押しに…新スタジアムに岡山県知事の考えは?

(篠原聖記者)
「現在のスタジアムを運営する岡山県の伊原木隆太知事も「県民がどのくらい賛同しているかは大事なこと。署名はそれを可視化する有力な手段」と話し注視しています。

こうした署名活動は他のスタジアムが新設される際も行われていて、広島では2013年に約37万人分が市に提出され、2024年2月に新スタジアム「エディオンピースウイング広島」が開業しています。

開業まで10年以上がかかった「エディオンピースウイング広島」。それには費用の問題が関係しています。

広島では総工費が約286億円に対し、国からの(防災関連)補助金のほか、県と市の負担が約80億円、企業からの寄付が約77億円などとなっていて、岡山とは条件や規模は違いますが、莫大な費用がかかることからも時間をかけて、必要性を見定めなければなりません。

それでも、議論を前に進めていくためには課題を1つずつ「見える化」していく必要があります。署名活動はその有力な手段と言えそうです」

岡山放送
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