キーワードは「解決」と「可能」
この記事の画像(6枚)日露首脳会談で安倍プーチン両首脳は領土問題について2人とも「解決」「可能」というワードを使った。ただ具体的な内容は明らかにせず、国境の画定や主権についての交渉が、難航していることをうかがわせた。
6月のG20の際に、日露平和条約締結の大枠合意ができるかが焦点だが、2人の言いぶりを聞いていると、やる気はあると思う。
歴史認識は違うのが当然
確かに両国の隔たりは大きい。
しかし例えば歴史認識については、違っているのが当たり前で、日本は「ロシアの不法占拠だ」と言い、ロシアは「戦争の結果ロシアのものになった」と言っている訳で、そこを一致させる必要はない。
アメリカ軍の駐留についても、もともと北海道にすら基地を置いてないのに、わざわざ北方領土に米軍が基地を置く気は全くない。
残る懸念は国境線と主権、そして国後択捉についての扱いだ。ここは双方がまさに「解決可能」な譲歩をしなければならない。
“2島先行返還に反対”の世論を作りたいのか?
ただそれ以上にこの問題をややこしくしているのが、両国のかたくなな世論だ。日本では安倍政権の2島先行返還方針に対し、なぜかメディアの左右両方が反対しているようだ。
週末に行ったFNNの世論調査では
「4島一括返還」が32.9%、
「2島先行返還で国後択捉は引き続き協議」が43.5%、
「2島だけ」10.1%、
「返還求めない」7.3%という結果。
つまり「絶対に4島」は3割しかいないということだ。
しかし合同で調査をした産経の見出しは、「4島返還多数」となっている。
おかいしなと思ってよく読むと、4島一括と2島先行を足すと76%なので4島返還を望む世論が圧倒的に多い、と書いてある。
これは違うのではないか。そうではなく、4島一括返還は3割しかいないのだから、国民は、4島返還は現実的でない、と思い始めている、という見方の方が正しい、と思う。
また朝日新聞も、同じ日に調査をしているが、2島先行返還に消極的な答えになるような質問の仕方にしている。
つまりメディアの左右両方が、2島先行返還に反対の世論を作ろうとしている、としか思えないのだ。
現実的な選択
ロシアでも領土返還に反対運動が起きている。ただあの国の場合、残念ながら我々と同じような民主主義国家とは言えない。プーチンの一言でどうにでもなる。
だからこの問題は、このままずっと日本が、原理原則である4島返還を言い続け、平和条約は結ばないのか。それとも島民の方々が行き来をし、あるいは住むことができるようにするために、ロシア側と合意を交わすか。
このどちらかを日本国民が選ぶ、ということだ。
冷静に考えれば、どちらが現実的か、誰にでもわかる話だと思う。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【イラスト:さいとうひさし】