アメリカ政府が、8月1日から日本製品に一律25%関税を課すと書簡で通知した。発動されれば輸出額が最大約6.5兆円減り、製造業の営業利益が2割減るとの試算があり、賃上げや冬の賞与が抑制される恐れがある。
“トランプ関税”書簡に石破首相「遺憾だ」
アメリカ政府の発表を受け、石破首相は「遺憾だ」としつつ、国益を守りながら合意に向けて交渉を続ける方針を示した。

石破首相:
誠に遺憾であります。米側との度重なる協議を経て議論には進展も見られます。このたびの書簡による税率は事実上据え置きするものであり、かつ協議の期限を延長するものであります。
今回のアメリカの発表について、石破首相は政府の対策本部の会合で「協議を延長するものだ」との認識を示したうえで、新たな期限の8月1日に向けて「国益を守りつつ、日米双方の利益となるような合意の可能性を精力的に探る」と強調した。

今後について、ある交渉関係者は「ご破算ではない。アメリカも結果を出せなかったということだ。経済動向でアメリカの出方も変わる」と強調する。
一方、別の政府関係者は「投資計画でトランプ氏を納得させる手法の限界が見えた。農産品の関税引き下げも含めた戦略の練り直しが必要だ」と指摘していて、今後の交渉の行方に注目が集まっている。
参議院選終わりに大きく動くか…日本側の交渉カードは
ここからは、フジテレビ・智田裕一解説副委員長が解説する。
青井実キャスター:
トランプ大統領から石破首相にあてた書簡には、「2025年8月1日より、アメリカが輸入するあらゆる日本製品に対し、わずか25%の関税を課します。これは分野別の関税とは別です。この25%という関税率は、貴国との貿易赤字の是正に必要な水準よりはるかに低いことをご理解ください」と、トランプ大統領の署名付きで書かれていました。

SPキャスター山口真由さん:
わずかっていう言葉で、当初の24%から1%上がってますからね。
青井キャスター:
25%になった場合、我々の生活にどんな影響が出るのか、そしてこのまま発動は止められないのか?智田さん、日経平均株価は、8日一時200円以上値を上げるなど下がらなかったわけですが、仮にもし25%になった場合は、我々の生活には影響が出てくるわけですよね?

智田裕一解説副委員長:
今日の株価は、新たな期限が8月1日になったということで、日本政府に交渉の余地が与えられたと受け止められて、相場が支えられましたが、関税が25%に至った場合は、賃上げとか冬のボーナスに影響が出るかもしれません。
関税が25%になった場合の試算を見ますと、アメリカの輸出額が年4.4兆円から6.5兆円減少し、製造業の営業利益が18〜26%ダウンすることが考えられると数字が出ています。そうすると、企業は賃上げに収益を回しにくくなるかもしれません。現在、3.5%の物価上昇に対して、製造業の賃上げが3%台半ばです。つまり、物価高に賃上げがようやく追いついてきたところなんですが、今回25%関税によって来年の賃金の伸びが2〜2.4%に抑えられるという結果になっています。つまり、2026年に物価が落ち着いてきたとしても、賃上げで十分カバーできなくなる可能性があるということです。
青井キャスター:
あと、ボーナスの話もありましたが?

智田裕一解説副委員長:
中小企業の賃上げは、これからというところも多くて、賃金上昇が十分に広がっていかない恐れがあるというほか、年末にかけて企業業績が悪くなっていくと、冬のボーナスが減ってしまう。そんな可能性も指摘されています。
宮司愛海キャスター:
日本側としては、8月1日の発動までになんとしてでも食い止めたいと思うんですが、これまで7回赤澤経済再生担当相が交渉する中で、日本側の交渉カードというのは何か残っているんですか。

智田裕一解説副委員長:
取り沙汰されているのが、参議院選終わりでシナリオが動くんじゃないかという可能性です。ベッセント財務長官は、最近、日本との関税交渉について「参議院選挙の結果を待つ必要があるかもしれない」とおっしゃっていました。この言葉なんですが、日本は選挙に影響があるからカードを切れないとベッセント長官自身が考えているとも言える発言です。
つまり、交渉材料が出尽くしたとされる中で、アメリカ側が選挙が終わったら、日本がこれまで切れなかった米などの農業カードについても、柔軟に考えられるようになるんじゃないかと考えている可能性があります。
青井キャスター:
山口さんに聞いていきたいんですが、選挙終わりから8月1日まであと10日間ぐらいしかないわけですが、日本はどうしていけばいいですかね。
SPキャスター山口真由さん:
当初アメリカは参院選があるからこそ、日本は早く妥協すると思ったわけですよね。参院選の結果いかんで政権の組み直しになった場合には、交渉どころではなくなるということと、相互関税か、それか部門別かで自動車関税みたいなものかどちらに絞るかで、日本とアメリカどちらも絞り切れてないので、ここを戦略的に日本も絞っていくことが必要かもしれないですね。
トランプ氏は、書簡を事実上の最後通告としている。これから日本がどのように対応していくのか注視していく必要がある。
(「イット!」7月8日放送より)