北海道で暮らす働くママの1日を追いかける観察ドキュメント「ママドキュ」。
子育ても仕事も頑張りながら働くママさんたちのリアルな1日をのぞくと、限られた時間で家事・育児をこなす究極の時短ワザの連続でした。
今回の主役ママは2022年1月に取材した札幌市西区に住む由衣さん。あれから3年半、由衣さんに大きな変化があったため、あらためて由衣さんのもとを訪ねました。
なんだかこっちまで元気になる底抜けに明るいママ。札幌市西区に住む由衣さん。2人の女の子のママです。
カラーセラピストなど数々の資格を生かした講座を子育て中のママさん向けに行っています。
孤独に子育てをするママを減らしたいとの思いから、ママたちをつなぐイベントも数多く主催しています。
子育てママたちをつなぐイベントでの収入はほとんどないため、イベントがない日はみっちりアルバイト。カレー屋さんで働いたら、次は隣のカフェへ。
時短のために、隣同士の別の店をハシゴして働いているんです。
そんな忙しい由衣さんの夕食作りには時短ワザがたくさん。
この日のメニューは、由衣ママ流「超カンタン春巻き」。ウインナーとチーズとを入れるだけなので下ごしらえの必要がなくラクチンです。
春巻きに使うチーズはとろけるチーズとさけるチーズの2種類。チーズとウインナーをそのまま春巻きの皮で巻いて揚げるだけ。さけるチーズを入れるとチーズがびよーんとのびると聞いて、この日初挑戦。
もう1種類はさっぱり。ウインナー、シソ、チーズを巻くだけの包丁いらずのカンタン春巻きです。
カット野菜を駆使して、あっという間に豚汁も完成。
付け合わせのブロッコリーもレンチンでできました。
子どもたちとの夕食の時間。
見事、チーズがびよーんとのびる春巻きに思わず拍手!忙しい日常の中でも楽しむことを忘れず、周りを元気にする由衣さんです。
由衣さんは「人がつながっていくのを見るのが好き。薄い関係じゃなく本当に心から楽しかったと思える空間を作りたい」と話していました。
あれから3年半、由衣さんに思いもよらぬ出来事がありました。
実は2024年、札幌市の無料の検診を受けたところ乳がんが見つかり手術。さらに抗がん剤治療を行うことになったのです。
この日は抗がん剤治療による脱毛に備えてウィッグをオーダーしに来ていました。
乳がんの罹患率は30代後半から急増。働く女性、子育てママ世代に特に多いがんです。
働くママが、ある日突然がんになったら…。
「最初入院が10日間。母親になってそんなに長く入院することがなかったから、いやこの間どうしようかなみたいな。いない間(家族が)ちゃんとやっていけるのか。自分ががんになって治療することより不安だった。いない間、家族が回るのかなみたいな」と由衣さん。
まず悩んだのは、家族の食事をどうするか。
由衣さんはミールキットで解決しました。
必要な具材や調味料が自宅に届き、レシピ通りに調理するだけで主菜と副菜が完成するミールキット。「夫も料理ができないわけではないけれど、献立を考えるのが毎日大変。バランスいいんですよ。それは良かった」と由衣さん。
家族が好きそうなメニューを選び、入院前に注文。パパと子どもたちで協力して作ったそうです。
さらに、一番頭を悩ませたのは、子どもたちだけになってしまう時間をどうするか。実家には頼れないなか、子どもたちの面倒を見ると声をかけてくれたのはママ友たちでした。
ママ同士のつながりを大切にしてきた由衣さん。
「はなから助けてもらおうと思ってママ友にはなっていないけれど、本当に心強かったし、子どもたちも心許せる家族がいっぱいいたから、それは助かった」と話してくれました。
治療は、右胸を全て切除する手術になりました。
家族や友人の力強い支えで安心して治療に専念。10日ぶりに帰宅した由衣さんに、子どもたちは大喜び。部屋を飾って待っていました。
まだママと一緒じゃないと眠れない えはなちゃんは、姉のここねさんと毎晩一緒に寝ていたそうです。
「妹と一緒に合わせて寝ていたので、いつもより寝る時間も早くて、逆に元気」とここねさん。
しかし術後、転移が見つかり抗がん剤治療のため、またすぐに入院することに。
えはなちゃんの学校でこんなアンケートがあったそうです。「おうちの人に一つお願いしたいことは?」
えはなちゃんは「健康でいてほしい」と書いていました。
「普通、みんな何がほしいとかどこに行きたいとか、自分のこと書く、3年生ぐらいだと。私の前で泣いたりしないし入院するときも泣かなかったけれど、でもたぶんすごく知らないところで傷ついていたり、悲しんでいたりするのかなと思うとそれが悲しいかな」と涙ぐむ由衣さん。
6月19日、愛する家族のために「頑張ってきます」と笑顔で抗がん剤治療に向かった由衣さん。
多くのママたちを元気にしてきたポジティブパワーで、由衣さんのがんとの闘いが始まりました。