長野県佐久穂町にイタリア料理店がオープンしました。古民家を改装した店内で、地元食材を「薪火」で調理して提供しています。運営するのは高校時代の同級生3人。地域を盛り上げたいという思いを取材しました。
■得意の「薪火料理」を提供
改装された古民家。中では薪火で食材が焼かれています。 2025年4月 、佐久穂町にオープンしたイタリア料理店「自在堂」です。
オープンから2カ月余り、早くも人気店となっています。名物はイタリア伝統料理のローストポーク「ポルケッタ」。薪火で豚肉をじっくりと焼き上げました。
松本市から:
「脂身がすごく甘くておいしくて、今年食べた豚で一番おいしかった」
腕を振るうのは、佐久市出身のシェフ・徳田史岳さん(52)。イタリアで学んだ経験を生かし得意の「薪火料理」を提供しています。
自在堂・徳田史岳シェフ:
「(ポルケッタは)地元の黒澤酒造の酒かすを使ってマリネしたりとか、塩こうじをマリネに使ったり、こだわってオリジナリティーも加えて提供している」
自在堂・渡辺智雄さん:
「自分で作っているハチミツだからびっくりするくらいうまかった」
■高校時代の同級生3人が運営
徳田さんと一緒に店を運営しているのが、御代田町で養蜂などを営む渡辺智雄さん(53)と「自在堂」の代表で東京で映像制作会社も経営している松村和順さん(52)です。
3人は佐久高校(現・佐久長聖高校)時代の同級生。地域を盛り上げようとレストランをオープンしたのです。
自在堂・松村和順代表:
「(3年前に)三十数年ぶりに佐久に帰ってきて街並みを見たら、東京でも見かけるようなお店がズラっと並んでいて、逆に、『今じゃなきゃ、ここじゃなきゃ、私じゃなきゃ』と思えるサービスをつくったら面白いんじゃないかと思った」
■店を開くきっかけは
3人が店を開こうと考えたきっかけは3年前です。
自在堂・松村和順代表:
「2年前までは利用されてなくて、草ボーボーの状態だったところを農地としてよみがえらせることをしてみた」
店で提供している自家製パンに使う小麦などは佐久穂町の畑で栽培しています。
もともと畑は渡辺さんの義理の父親が所有していましたが、3年前に他界。「後継者」を探していた渡辺さんが松村さんに声をかけました。
自在堂・渡辺智雄さん:
「(松村さんが)農家みたいなことをやりたいみたいな話もあって、継ぎ手がいるかもわからないし、やるなら自分たちでやってみようみたいな」
2人は2年前から引き継いだ畑で小麦などを栽培。そこで収穫した食材と渡辺さんが作るハチミツを生かすため「レストラン」の開業を決めました。
松村和順さん:
「育てたものをそのまま使うことができるし、ハチミツを料理に使うこともできる。いろんなパズルのピースが中心にレストランがあることによって、それがちゃんと組み合わせられるんじゃないかと」
■築150年超の「古民家」を改装
どこで開業するか?
目をつけたのが「古民家」です。
数年前から空き家になっていた築150年を超える木造平屋建てを買い取り約1年をかけて改装しました。
荒れ放題だった庭も、はりやすりガラスなどは面影を残しつつ、照明やカウンターは現代風に。
松村和順さん:
「新しい付加価値、魅力をつけ加えて、レストランとして新しい命が吹き込まれたような感じがあると思う」
そして、2人は東京でシェフをしていた徳田さんを誘いました。
徳田史岳さん:
「ゆくゆくはこっちの方でやってみたいという思いはあったので、あまりちゅうちょはなかった」
■地元産の食材にこだわる
3人が集まりスタートした「自在堂」。「薪火を囲んで千曲川の恵みを分かち合う」が店のコンセプトです。
千曲川流域の食材にこだわり、ポルケッタの豚肉は八千穂産。
ポルケッタと並ぶ人気メニュー「地鶏の串焼き」は上田市の地鶏「真田丸」を使っています。
松村和順さん:
「この辺ってすごく優れた生産者の方がたくさんいて、特に野菜なんかは毎日持ってきていただいたり」
野菜や魚も周辺の生産者から直接仕入れています。
■店は早くも好評
オープンから2カ月、口コミで評判が広がり、今では1日約50人が訪れる人気店になりました。
佐久穂町から:
「ポークが炭火焼きみたいな感じで香ばしくて特においしかった」
佐久市から:
「サラダもボリュームがあって新鮮だった。鶏肉がすごく歯ごたえがもちもちしておいしかった」
店の雰囲気も好評です。
佐久市から:
「古民家(の店)多いけど、割と増えてきているけどこれだけ照明とか凝ってる店あまりないかなって」
地元・佐久穂町の住民はー
佐久穂町から:
「いま少子化で古民家もだんだん取り壊されていってしまうのが多いじゃないですか。こういう感じで活用できればいいと思う。皆さんご利用していただいて、活気ができて、またどんどん佐久穂町が繁栄していけばいいかなって」
■多くの人を巻き込み地域活性化を
高校時代の同級生3人がオープンさせたイタリア料理店「自在堂」。今ではスタッフや食材の提供など多くの人が関わる店となりました。今後、さらに多くの人を巻き込み後継者不足の農地の活用なども検討しています。
自在堂・徳田史岳シェフ:
「佐久穂に行けば自在堂があるというのが認知されて、ここにくれば楽しいよって。ここの街角が料理を含めて楽しい街角になるような、そんな店になっていけばいいな」
自在堂・渡辺智雄さん:
「継ぐ人がいなくて荒れてる畑はどこもいっぱいあると思う。後継者じゃないけど、そういう人たちも育てていかないといけないと思う。だから一緒にやっていける仲間も増えていけばいい」
自在堂・松村和順代表:
「たくさんの人に知ってもらいたい食材や生産者の方たちと出会って、おいしいもの、この季節だけのもの、面白いものを含めて提供したい」