伊東市の田久保眞紀 市長は7月2日に記者会見を開き、自身に浮上している“学歴詐称”疑惑について、確認した結果、大学を除籍されていたことがわかったと明らかにした。一方で田久保市長はこれまで卒業証書を市議会の議長に見せたと主張していたことから、今回の会見により新たな疑問も浮かぶ。

大学卒業は“勘違い”?

7月2日午前11時。

記者会見に臨んだ伊東市の田久保眞紀 市長は開口一番「この度は私の経歴にまつわることで市民に迷惑と心配かけたことを深くお詫びしたい」と述べた上で「私が自ら公開している経歴に関しては問題ないと説明してきたが、その点に関しては現時点においても変わりない。私が経歴を詐称しているということは一切ない」と強調した。

会見に臨む田久保市長
会見に臨む田久保市長
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ところが、続いて6月28日に卒業証明書を取得するため大学を訪れたことを明らかにし、その際、「卒業の確認ができず除籍であることが確認された」と口にする。

田久保市長によれば、大学卒業は“勘違い”であり、「大学時代の後半は特に自由奔放な生活をしていた」という。

告発文を“怪文書”と断じて強気な姿勢貫くも…

事の発端はさかのぼること1カ月。

伊東市議会の議員全員宛てに「東洋大学卒ってなんだ!彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」と記された差出人不明の告発文が届いた。

市議全員に届いた告発文
市議全員に届いた告発文

一方で、市が発行した最新の広報誌に記載されている経歴は「平成4年 東洋大学法学部卒業」であり、市議会の一部が問題視。

市が発行した広報誌
市が発行した広報誌

このため、田久保市長は正副議長に“卒業を示す資料”を提示したが複写には応じず、その後は「証拠に基づかない“怪文書”には対応しない」との考えを示す。

すると、市議会の本会議でも疑惑について質問があがったが、田久保市長は「この件については“怪文書”を誰が作り、議会に送ったことも含めて代理人弁護士を通じて必要な作業に入っている。このような“怪文書”という卑怯な行為を行う人間の一定の要求を満たすことは次の怪文書や市民に対する何か圧力をかける行為の助長になる。この件に関してはすべて代理人弁護士に任せているので、あとのことは弁護人から公式に発言のない限りは私からの個人的な発言は控える」とゼロ回答を貫いた。

市議会本会議で答弁する田久保市長(6月25日)
市議会本会議で答弁する田久保市長(6月25日)

事態に動きが見られたのは6月26日。

市議会が強い調査権限のある百条委員会を設置する方針を固めると、田久保市長は同日夜、一転して「怪文書が元というのは非常に引っかかるが現時点で自分自身に説明できることは説明していこうと考えている」と表明した。

公職選挙法には抵触しないと強弁するも…

そして、開かれた7月2日の会見。

田久保市長は除籍となった経緯については「現時点で説明できず確認中」としつつ、「私自身が大学を卒業しているという経歴は選挙中も自ら公表していないので、弁護士と確認したところ公職選挙法上は問題ない」と強調した。

確かに田久保市長が5月に行われた市長選に際して作成した討議資料や選挙公報には「東洋大学卒業」の文字は見当たらない。

田久保市長によれば「学歴や経歴に関して自分自身の中で重視していない。そういったことを選挙の公報等で表示して、票を得たいという意識が全くなかったので選挙公報や法定ビラには記載しなかった」といい、同席した代理人弁護士も「学歴を重視せず選挙に出ていて、大学卒業を自らは公表していないので公職選挙法違反の構成要件に当てはまらない」と述べている。

しかし、田久保市長が市長選の立候補に当たり報道各社から依頼された経歴確認書には「東洋大学卒業」と記されている。

こうしたことから、田久保市長側の主張に疑問を呈するのがテレビ静岡の「ただいま!テレビ」にレギュラー出演する菊地幸夫 弁護士だ。

菊地弁護士は「メディアに公表するということは市民に広がるということ」と指摘した上で「なぜ、それが公職選挙法には抵触しないという解釈になるのか、私にはわからない」と話す。

新たに“文書偽造”の疑念も

ところで、今回の会見を聞いて多くの人は“ある疑問”が浮かぶのではないだろうか?

それは、田久保市長が正副議長に見せたという“卒業を示す資料”は何だったのかという疑念だ。

この点について、田久保市長は会見であくまでも“卒業証書”であると主張。

とはいえ、通常は除籍となった学生が卒業証書を受け取れるはずがなく、同席した弁護士は「普通に考えて偽物とは思わない」というが、取材に応じた中島弘道 議長は「私に見せた卒業証書は偽物だったということ。学歴詐称がはっきりした」と断罪した。

取材に応じた中島弘道 議長
取材に応じた中島弘道 議長

田久保市長は当初、会見に卒業証書と卒業アルバムを持参すると説明していたが実際には何も手にしておらず、記者から再三理由を問われたが「除籍であるという事実を持って来た」と質問とかみ合わない答えに終始。

仮に中島議長に示した“卒業証書”が偽造されたものであった場合、前出の菊地幸夫 弁護士は「私文書偽造罪や偽造私文書行使罪に抵触するおそれがある」と指摘し、このほか「学位の詐称は軽犯罪法違反に、学歴を詐称して当選し市長としての給与を得たのであれば詐欺罪に該当する可能性もある」との見解を示す。

議会側は辞職勧告案を提出する構え

会見では告発文について公益通報ではなく“怪文書”と断じた理由について、差出人の記載がない普通郵便で「非常に整っておらず恐怖を覚える文面だった」ことを挙げた田久保市長。

今後の進退については「『責任を全うするためには仕事で返しなさい』『逃げ出すな』と支援者から言われている」として、「いまの状況を投げ出し逃げだすようなことは言いたくない」と現時点での辞職を否定した。

他方、伊東市議会は7月7日の6月定例会最終日に市長に対する辞職勧告決議案が提出され、同日採決される見通しとなっている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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