被災から1年半、商店街の解体決断 - 富山県氷見市の復興と住民の葛藤

観光客が訪れるまんがロードのすぐそばに位置する商店街。その建物の基礎部分には大きな亀裂が走り、アーケードの柱の土台には深いひびが入っている。震災から1年半が経過した富山県氷見市の中央町商店街には、今なお地震の爪痕が色濃く残っている。
公費解体が進む被災地

富山県氷見市では、被災した住宅の解体や撤去を行政が負担する「公費解体」が進んでいる。5月末時点で、912件の申請に対し、およそ43%にあたる396件の解体が完了した。そして今、市の中心部にある商店街のビルも公費解体される見通しとなった。
氷見漁港や道の駅にも近い中央町商店街には、59世帯の店や住宅が軒を連ねている。今回解体を申請したのは、1967年ごろから段階的に建てられたビル2棟だ。長屋式に連なり壁や柱を隣同士で共有する構造のため、単独世帯での解体が難しく、これまで住民たちが話し合いを重ねてきた。そして先月末、全員が解体に合意し、市に申請した。

老舗店も解体の決断

1951年創業の「お食事処 よしだや」もこの公費解体の対象となっている。地元の常連客からは「無くなったりすると残念」「寂しい。仕方ない、やらないといけないことだから」という声が聞かれた。

外観からは大きな損傷が見えないこの店だが、バックヤードに入ると様子は一変する。よしだやの吉田和広社長は「ここの壁とかにびっしり亀裂が入っている」と案内する。店内のいたるところにひび割れや溝があり、木造建ての住宅部分は液状化の影響で床が傾いている。この店舗兼住宅は半壊と判定されていた。

「同じ規模の地震が来ないとも限らない。来た場合に安全性は保障できないと専門家に言われた。お客さんの出入りもあるので解体に踏み切った。生まれ育った家なのでここを離れるのは寂しい思い」と吉田社長は語る。
解体後の街の未来

よしだやは市内の別の土地に移転することを検討しているが、解体後にこの地に戻る予定の世帯は1割にも満たないという。市は年内にもこのビルの公費解体に着手する考えだ。
住民代表の一人である藤田智彦さんは「中央町という名前の通り観光的な意味でも市民生活でも中心になってきた場所。跡地の活用は住民からも意見を出し検討していきたい。行政にも支援を求めながら活気を取り戻す活用ができたら」と話す。
震災から1年半が経過した今、公費解体を早く進めてほしいという住民の思いがある一方で、街の衰退や人口流出を防ぐためにはどうすべきか、住民たちの葛藤が感じられる。