能登半島地震の発生から7月1日で1年半が経ちました。液状化被害を受け建て替えを決意していた新潟市西区のホテルでは、一歩一歩、再建に向け準備が進んでいます。1年半の歩みと現状を取材しました。
■「苦しかった」被災したホテル 本格的な営業再開に向け準備進む
2024年1月1日に発生した能登半島地震。県内も液状化などにより大きな被害を受けました。
中でも道路に亀裂が入ったり、建物が大きく傾いたりと被害が目立ったのが新潟市西区です。
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「大変な1年半になった。すごく苦しかった」
この1年半を「苦しかった」と振り返るのは、寺尾朝日通りに建つビジネスホテル、ホテル寺尾の勝島猛代表です。
ホテル寺尾では本館と2つの別館が大きく傾き、“中規模半壊”と判定されました。先の見えない状況に不安を募らせながらもホテルを再建することを決意。
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「どこまでやれるか分からないが、私の残りの人生をかけて」
2つの別館は3500万円、本館は1億円ほどの費用を投じて立て替えました。
6月30日、ホテルに伺うと外観も様変わり。さらに地盤沈下ででこぼこしていた床も平らに。7月中旬から本格的にお客の受け入れを再開するための準備が進められていました。
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「ホテル寺尾は築30年以上経っていた。新しくなり、気持ちいいから利用する人も増えると思う」
■「補助金適用されるか早く知りたい」不安抱えながらも歩み進める
ただ、経費の最大4分の3を補助する県のなりわい再建支援補助金が適用されるかどうかは地震から1年半が経った今も分かっていません。
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「なりわい補助金を何とか早々に…。通してもらえるか、仮に通らなかったとしても結果が早く知りたい。やはり不安」
新潟市が行う見守り支援事業でホテルを訪れてくれる職員からの情報提供や会話で不安な気持ちは和らぐと話す勝島さん。しかし、ホテルの周辺を見渡すと…
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「ここにあった会社は取り壊された。その駐車場の向こうの古いアパートがついこの間解体された。向かいにあったクリーニング屋さんもなくなってしまった」
地震によって一変した周囲の景色。
「一日でも早く復旧・復興を成し遂げたい」そんな願いをかなえるために、宿泊施設の少ない地域で果たすホテル寺尾の役割は大きなものとなっています。
【ホテル寺尾 勝島猛 代表】
「働く人たちにとって、ここが必要というような一つの西区のインフラだと思っている」
地震から1年半が経った今も様々な決断を迫られている被災者。復旧・復興に向けた歩みが続いています。
■被災家屋の公費解体・液状化対策の進捗状況は?
地震発生から1年半が経ってもまだ被災地の復旧・復興に向けては道半ばです。
新潟市は地震被害を受けた家屋の公費解体を進めていますが、1045件の申請に対し、5月末時点で解体が終わっているのは650件。進捗率は62.2%に留まっています。
新潟市は今年10月末までに解体を完了させたい考えですが「解体する場合の移転場所が定まっていない」「生活再建の方法が未定」など解体の開始時期を決められない人も少なくないようです。
そして、液状化の被害が出たエリアではその対策が必要となります。
現在、地質調査を踏まえた地盤の検証が行われていますが、その結果は今年8月にも行われる説明会で報告される見通しです。
来年度中に工事可能エリアを検討する概略設計を行い、実証実験は再来年度に…その後、2028年度に住民の意向調査を行った上で工事に向けた最終段階に移ることになります。
液状化対策には長い年月がかかることになりますが、被災住民に対する息の長い支援が重要といえそうです。