佐賀県の鳥、県鳥としても親しまれるカササギ。近年、徐々に姿を減らす中、現状や原因について研究を続けている大学院生が佐賀大学にいます。調査には心強い助っ人も加わっています。
【土屋さん】
「ヒナがいるかも、入ります」
【佛坂さん】
「入った入った入った・・・これはヒナの声やね」
電柱の上に作られた巣で子育てをしているのは白と黒のコントラストが美しいカササギ。カササギが生息する県内の16の市町は国の天然記念物に指定されていて佐賀の県鳥でもあるなど昔から親しまれている鳥です。
その子育てを双眼鏡で見守るのは佐賀大学大学院農学研究科2年の土屋佳央さん23歳。去年からカササギの生息調査を行っています。
【土屋さん】
「このあたりの犬井道のあたりの巣立ちを確認しているんですけどここの方は半分近くは巣立ちが成功していてまだ巣立ちが最後まで確認できていない巣がいくつかあるので」
カササギのヒナの巣立ちは4月下旬から7月上旬ごろ。残る巣ももうすぐ巣立ちを迎えます。一緒に調査をしているのは鹿島市出身の佛坂安恵さん。50年前の佐賀大学の卒業生です。
【土屋さん】
「待ってる感じしますよね」
【佛坂さん】
「そうそうエサを待ってる感じする」
Q.巣の横にいるのが親鳥?
【土屋さん】
「巣立ってちょっと経ったヒナと親鳥ってあんまりサイズが変わらなくて見分けるのが難しくなってくる」
佛坂さんは1969年に大学の卒業研究でカササギの分布を調査。それから約40年後の2008年、カササギが減ったと感じ、個人の研究として再びカササギの分布調査を行ったと言います。
【佛坂さん】
「微高地があったり、木がいっぱいあったり全然違ってましたもんね景観が。2008年に調査に回ったときにびっくりしました、景観の変化に」
そして去年、佐賀市内のカササギ減少に疑問を持ち、研究テーマに選んだ土屋さんと、教授の紹介で知り合い研究に力を貸しています。
カササギの巣は50年前は有明海周辺の木に作られていたということですが、今ではほぼすべての巣が電柱に作られています。さらに、その数の減少を示すデータも。
子育てが終わって使われなくなり停電や落下の危険性があるため県内の電柱から撤去されたカササギの巣の数はここ10年間で4000個から2000個に半減しています。
【佛坂さん】
「集落の中の木々がずっと減ってるということですね。農家の環境とかそういうのが変わってきている」
【土屋さん】
「街中の住宅とかになるとやっぱり家庭菜園とかもないですし木も植わってないので巣立った後に移動する木もないしエサ場もない」
農地や背の低い草むらなどエサとなる虫などが採れる場所が減ってきていることや、天敵のカラスが増えたこともカササギ減少の大きな原因と考えられています。
【土屋さん】
「本当に調査しているときにカラスに襲われる場面とかもみかけることがある。大体はカラスが複数羽いてつがい2羽で守るみたいな感じで」
Q.そうやってカラスに襲われているとき助けてあげたりする?
【土屋さん】
「しない、見守ってますね」
【佛坂さん】
「どうか無事でありますようにって思うくらい。できないもん、それは自然界のことだからね」
一方、民間や行政で減少を食い止める取り組みも続けられています。電柱や配電設備を管理する九州電力送配電では停電のリスクを減らしながら巣を守っていけるよう運用方針を定めています。
【九州電力送配電配電部 森部裕章さん】
「カササギの巣はなるべく撤去せずに剪定で対応することが基本となっております。設備対策についてもですね電柱に巣を作っても停電が発生しないようにカバーの取り付けだったり空間の対策を実施してカササギと共存できるような取り組みを実施しております。」
またこんな施設も…県内にあるカササギのヒナの保護施設。文化財であるカササギを守るため県の文化課が運営しています。
【佐賀県文化財保護・活用室 光富柊介主査】
「カササギのヒナがカラス等に襲われたりというところで巣から落下してしまうことがありますのでそちらの幼鳥を一時的に保護して自分で飛べるようになるところまで育ててから自然に返すという」
ここでは6月26日の時点で9羽の世話をしていて、今年はすでに4羽が成鳥になり、保護された場所に放されました。
【光富さん】
「まずは近くに親鳥がいるかどうかというのを県民のみなさんにご確認いただいて基本的に自然に任せて自然の中で成長していくのが一番なんですけども、やっぱり近くに親鳥がいるかどうか確認をしていただいてどうしてもひとりで生きていけなさそうだな、という時は県の方にご連絡いただければ我々が保護させていただきますので」
ヒナの保護は約40年前に始まり、これまでに約1900羽のカササギを自然に放したということです。
【土屋さん】
「オレンジの方が佛坂さんの2008年のデータになるんですけどこのときから比べて2025年、72%、73%、52%、88%どこも大きな減少率が見られまして」
3月末からカササギの目撃数が多い佐賀市や鹿島市などの巣の数や巣立ちの状況を調べてきた土屋さん。巣立ちを最後まで見届けたあと本格的なデータの分析に入りますがすでに発見もあったと言います。
【土屋さん】
「意外と巣立ち成功率はそこまで低くなくてむしろ佛坂さんの時代よりは高密度の地域では巣立ちの成功率は増加していたので維持できている場所とできていない場所が結構大きな差があるのではないかなと今考えています。」
巣の数が減ることなく多くのヒナが巣立ちを迎える地域にはどんな特徴があるのか。土屋さんは来年1月をめどにレポートをまとめる予定です。
【土屋さん】
「カササギは昔から本当に佐賀で愛されてきていて当たり前にいた鳥だったっていうのがなぜ佐賀で減ってしまっているのかその原因を突き止めることはカササギにとっても佐賀に住む皆さんにとっても大切になってくるんじゃないのかな」