地元の声を聞く街頭活動1000回超 — 市民参加型選挙で勝利した出町新市長

この記事の画像(9枚)

高岡市長選挙は波乱の結果となりました。42歳の現職市長が1期で敗れ、新人の出町譲さんが初当選を果たしました。

圧倒的な組織力も届かず

現職の角田候補は自民党、公明党、連合富山の推薦を得て、圧倒的な組織力を生かした選挙戦を展開しました。しかし「負けるはずがない」という危機感の欠如が選挙戦の出遅れにつながりました。被災地住民の震災対応への不安や不満など、有権者に広まっていた批判を払拭できないまま、実績や今後のビジョンも届けられなかったことが最大の敗因です。

一方、高岡市議会初の女性議長を務めた新人の中川さんは、3期にわたる市議の経験から、角田市政が期待外れだと訴え、現職の批判票を取り込もうとしましたが、支持は広がりませんでした。

地道な活動が実を結んだ出町氏

市長選2回目の挑戦となった出町さんは、4年前の落選以降、市議として200回を超える対話集会や1000回を超える街頭活動を地道に続けてきました。この努力が実を結び、市民の声を聞く姿勢が有権者に定着。市民参加による選挙戦を展開したことで、角田さんへの批判票を圧倒的に集める結果となりました。

BBTが投票日に行った出口調査では、角田さんを推薦した自民党と公明党の支持層の半数以上が推薦候補以外に投票したという結果が出ています。また、有権者の半数近くを占める無党派層の6割が出町さんを支持していました。

地域ごとの投票傾向

能登半島地震からの復旧復興も争点となったこの選挙。液状化の被害が出た伏木、吉久、横田地区では過半数を出町さんが抑えましたが、他の地区に比べて特に支持が多いというわけではありませんでした。

一方、出町さんや中川さんが問題視していたあいの風鉄道高岡駅前のダイエー跡地がある下関地区では、中川さんへの支持が他の地区よりも広がっていました。

全体としては出町さんが支持を広げ、投票数の57%という過半数を超える得票につながりました。

市議会との関係が今後の焦点に

出町新市長にとって、当面の課題となるのが市議会からの理解をどう得ていくかという点です。高岡市議会の22人中20人が今回の選挙で角田さんを支援していたため、その議会にどう理解を得ていくかが重要になります。

高岡市議会の薮中議長は出町さんの事務所を訪れ、「高岡市民の皆さんは『チェンジ』を選んだ。議会として新しく市長になった出町譲さんとともに車の両輪としてしっかりと高岡市政にお返ししていきたい」と述べました。

一方、最大会派である未来創政会(自民党)の金森一郎市議は「これまで一緒に話に乗ってこなかった人がトップに立った。我々としてもどうするのかというのは少し考えたい。お互いの歩み寄りは必要。これから様子を見たい」と慎重な姿勢を示しています。

参院選への影響も

7月3日に公示される参院選にも、今回の選挙結果が影響を及ぼす可能性があります。高岡市長選で自民党は前回に続き2連敗となったからです。

自民党高岡市連の支部長である山本徹県議は「短い時間かもしれないが立て直しをして参院選に臨んでいきたい」と述べ、自民党県連会長の橘慶一郎衆院議員も「選挙の構図や候補者も違うので参院選は参院選でしっかり全県的に戦いたい」と話しています。

29日の出口調査では高岡市の自民党支持層は3割でした。裏金問題などで自民党への逆風が吹く中、参院選への影響は避けられないでしょう。

今回の選挙で問われたのは、自らの未来を託す市長を選ぶ有権者の選択です。今後は市民の力で選ばれた出町新市長の手腕が問われることになります。出町新市長の任期は来月12日から4年間です。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。