「落とし物センター」が新設

昨年、愛媛県内で届けられた落とし物の数は18万点以上。2008年と比べると2.5倍以上に増加している。

この急増する落とし物を効率的に落とし主の元へ返すため、今年4月、松山東警察署内に県警の「落とし物センター」が新設された。

愛媛県警が開設した「落とし物センター」
愛媛県警が開設した「落とし物センター」
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10人の県警職員が対応に当たる

落とし物センター電話:
「落とし物センターです」

約10人の県警の担当職員が県内各地から届けられた落とし物の対応にあたっている現場を取材した。

落とし主のもとに返されるよう対応にあたる
落とし主のもとに返されるよう対応にあたる

業務効率化と女性の育児支援を両立

センターが新設された背景には「業務の効率化」がある。

これまで落とし物は最寄りの交番や警察署に届けられ、落とし主からの問い合わせも各地の警察署が対応していた。

各警察署にかかる問い合わせの電話は1日平均30件程度。センターではこれを引き継ぎ、探している落とし物と届けられた落とし物のマッチングを図る。この一括対応によって警察署の負担が軽減されるという。

特筆すべきは、センターのスタッフが全て女性職員であること。定時の窓口時間に合わせた働き方ができるため、子育て中の職員の育児支援にも一役買っているという側面もある。

「落とし物センター」が新設
「落とし物センター」が新設

外出する機会が増えたことが原因か?

落とし物の増加はコロナ禍があけ外出する機会が増えたことや、ワイヤレスイヤホンなどなくしやすい 小型家電の普及が影響しているとみられる。

様々な事情で増える落とし物
様々な事情で増える落とし物

「お礼」をめぐる知られざるルール

センターには毎日多くの落とし主が訪れる。

免許証を受け取りに来た30代男性は「JRの駅前で財布を触っているときに落ちたのに気がつかなくて。警察に届けてくれてるなと思って安心しました」と話す。

職員:
「拾った方は何も『お礼』はいらないということだったので、手続き以上になります。」

拾った方は『お礼』はいらないとのこと
拾った方は『お礼』はいらないとのこと

拾った人が求める「報労金」とは?

実は落とし物を拾った人には、「お礼」にあたる「報労金」を最大2割の金額分まで請求できる権利がある。

この日も通帳を落とした男性が、拾った人からお礼を求められていた。

職員:
「拾った方がお礼が欲しいと仰っていまして…」

通帳の場合は残高からではなく、「通帳の再発行手数料」の5%~20%のお礼を返す義務があるという。

「私は何回も拾ったことあるけど、お礼を求めたことはございません。現金何十万円も入った財布も拾ったことありますよ」と話す落とし主の男性は、自分のミスなので仕方ないと、「報労金」の支払いに納得した様子だった。

落とし物をしないようくれぐれも気をつけてください。

「再発行手数料」からお礼を返す義務がある
「再発行手数料」からお礼を返す義務がある

驚きの現金紛失額

こちらのパチンコ店の従業員は、店内で見つかった落とし物を一週間分まとめて署に届けに来ます。封筒の中からはカードや小銭がジャラジャラ。

「1万円札が落ちていることもありますし、小銭だけのときは2~3千円、1万円札が落ちていたら1万5千円くらいの届け出になります」と話してくれた。

県内で去年1年間に届けられた現金の落とし物の総額は、なんと約1億8千万円。1台3千万円の高級外国車が6台も買えるほどの現金が落とされているのだ。

去年1年間に届けられた現金の総額は約1億8千万円
去年1年間に届けられた現金の総額は約1億8千万円

保管庫にカメラ初潜入!

落とし物はどこに保管されているのか。

松山東警察署にある「保管庫」にカメラが初潜入した。
ここには、JRの駅や繁華街、デパートなど場所ごとに保管された落とし物が並ぶ。

「傘はすごい数ありますけれど」
担当者によれば、傘だけで300以上はあるという。
特に梅雨時には大量に届くそうだ。

傘だけで300本以上
傘だけで300本以上

落とし物ランキングは?

よく届けられる落とし物ランキングは?

3位が乗車券やプリペイドカードなどの「有価証券」、
2位がハンカチやタオルなどの「生活用品」、
1位が通帳や免許証などの「証明書類・カード」、となっている。

これらの落とし物はATMに置き忘れるケースが多いそう。

ATMに置き忘れるケースが多いそう
ATMに置き忘れるケースが多いそう

動物も迷子に?警察を驚かせた珍しい落とし物

県内の警察署では過去に珍しい落とし物も“いました”。

首を長くして飼い主の迎えを待っていた「ボールニシキヘビ」、
空き家に“潜伏”していた体長2メートル以上の「ニシキヘビ」、
そして警察官も驚いたというクジャクまで。

「鳩とか、インコとか、鶏はありましたが、クジャクは初めてです。びっくりしました」と担当者は語る。

ほかにも「グリーンイグアナ」など、生き物が届けられると保管も大変だ。

首を長くして飼い主の迎えを待っていた「ボールニシキヘビ」
首を長くして飼い主の迎えを待っていた「ボールニシキヘビ」

息子に代わって受け取りに来たお母さん…実は

さて、続いてやって来た高齢女性。仕事で受け取りに来れない息子の代わりに、免許証を受け取りに来たという。

息子が落とした免許証が見つかり安堵する女性だが、おもむろに警察官に相談したのは…。

なんと女性自身もデビットカードを落としていた。結局この日は見つからず、遺失届を書いて帰ることに。

女性:
「見つかってほしいですけど、落とした私が悪いんやけんね。しょうがないですけど」

大事なカード、早く見つかりますように。

なんと女性もデビットカードを落としていた
なんと女性もデビットカードを落としていた

次々と受け取りの人たちがやって来る

その後も署の窓口には次々と受け取りの人たちがやって来る。

通帳を落とした女性:
「私何回か落としたけど帰ってこなかったことがないので、これは日本ならではの親切心とか、そういうところがあるんだろうなと」

日本ならではの親切心
日本ならではの親切心

何より重要なのは「落とし物をしないこと」

県内で去年落とし物が落とし主に戻ってきた割合は約8割に上る。しかし、2割は戻ってきていない。

県警は「落とし物をしないこと」が何より重要として、外出先では常に置き忘れがないか確認する”クセ”を身につけてほしいと強く呼びかけている。

県警のホームページには各警察署に保管中の落とし物の情報が公開されている。保管期間は原則3カ月のため、落としたと思ったらすぐに確認するか、電話などで問い合わせるよう呼びかけている。

落とし物センター⇒
https://www.police.pref.ehime.jp/kaikei/isitsubutsu/kouhyou/top.html

落とし主に戻ってきた割合は約8割
落とし主に戻ってきた割合は約8割
テレビ愛媛
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