トマト嫌いが作る"呉羽キャンディー" 薄皮とろける極上ミニトマト

夏野菜が続々と市場に登場する季節となった。富山市では地元産の新鮮な野菜が豊富に出回り始め、先週の猛暑の影響で価格にも変動が見られる。

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久々の豊作、地元野菜が勢揃い

大松青果の大井山行雄会長によると、「今日は久々に入荷が多い」という。富山市近郊の北代や呉羽からは新ジャガイモが、八ケ山からはキュウリ、呉羽近郊からはナスが出荷されている。ただし、先週の暑さの影響でつやのないナスも見られる。

夏野菜の代表格として初入荷したのは冬瓜。また、梅の出荷から約2週間後に登場する赤シソも並んでいる。「今年は梅が不作だったので梅をつける人も少ないようで、赤シソは例年より安め」と大井山会長は説明する。

猛暑で価格下落、夏野菜が出揃う

先週の猛暑は野菜価格にも影響を与えた。「ジャガイモ、タマネギ、ダイコン、キャベツ、ハクサイといった野菜は全般的に値下がりしていて、1割から2割くらい値段が下がっている」と大井山会長。

タマネギは愛知産がほぼ終了し、淡路島産が入荷。また南砺市の「雪たまねぎ」も先週から出回っている。「11月ごろに苗を植えて冬を越すから雪たまねぎという。この時期は北海道産のタマネギが始まるまでの端境期で、南砺の雪たまねぎは全国的にも引き合いが強く人気がある」と解説する。

トマト嫌いが極める「呉羽キャンディー」の物語

富山県内の注目の生産者として、角裕太さん・知恵さん夫妻を取材した。角さんたちが作るのは「呉羽キャンディー」という名前のミニトマトだ。

「東北の品種で、皮が非常に薄くてとても柔らかいのが特徴」と角さん。試食させてもらうと、「ヘタを取ると皮ごと取れちゃう」ほどの薄皮で、通常のミニトマトにあるプチッとした食感はなく、「すっと歯が入っていく。フルーツみたい」な食感が特徴だ。

しかし栽培は容易ではない。「収穫の時に横の茎にあたって穴が開いたり、混み合っていて横どうしが擦れてかわが破れたりとか、ロスがめちゃめちゃ多い。通常のミニトマトの3分の1くらいしか採れない」と角さんは語る。

祖父の姿を胸に、農業への挑戦

栽培を始めて4年目の角さんだが、驚くべきことに「僕ミニトマト嫌いなんですよ。トマトも嫌いで」と明かす。祖父がトマト農家だったが、それを食べたことも、給食のトマトさえも口にしたことがないという。

「祖父が亡くなってから誰も使っていなかったので、再利用して面白いことしようかとUターンを決意して」と角さん。トマト嫌いの彼は、自分がおいしいと思える品種を探し続け、この「呉羽キャンディー」にたどり着いた。

農業の道は平坦ではなかった。「何回もやめたいと思った。もう嫌だなとか」と苦労を語る角さん。そんな時、支えになったのは祖父の存在だった。「祖父があれだけ頑張って農業一本で家族を養って、人として尊敬する部分があったので、常にイラついたときは心の中で祖父と対話しながら」農業に取り組んでいるという。

現在は糖度20度のトマト作りを目標に研究を続けている。「呉羽キャンディー」は1パック350円で市内の一部スーパーのほか、八ケ山の直売所、ネットでも購入可能だ。今後は贈答用の高級商品も企画中という。

富山テレビ
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