昼のチャイムが鳴る前から、生徒たちの足は自然と食堂へ向く。安くてボリューム満点、それだけではない。60年以上受け継がれた「秘伝の味」や、生徒一人ひとりへの手書きメッセージ―。富山県内の2つの学校食堂には、単なる「食事の場」を超えた温かさがあった。

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駆け足で向かう先は「450円のラーメン」

富山工業高校の4限目が終わると、廊下に足音が響く。生徒の9割が男子というこの学校で、開店と同時に食堂はほぼ満席になる。

人気ナンバーワンのメニューは、鶏ガラスープに背脂を加えた濃いめのラーメン。さらに150円で替え玉もできるとあって、育ち盛りの男子生徒には手放せない存在だ。

この日、大盛りにチャーシュー5枚増しを注文した生徒は「持久走が3限目にあったので、その分のカロリーをとるために大盛にしました」と話した。授業の疲れをそのまま食欲に変えてしまう、いかにも高校生らしい光景である。

60年以上続く「木曜の味噌カツ丼」

そんな富山工業の食堂でひときわ注目を集めるのが、毎週木曜日だけ登場する味噌カツ丼だ。500円で味わえる日替わりどんぶりの一つで、食堂の経営者が変わっても60年以上作り続けられているという。1日25食限定のため、すぐに売り切れる。

食堂を切り盛りする長岡和枝さんはこう語る。「ずっと人気で続いているものなので、味を守っていきたいなという想いで、味噌だれを作っています。OBがたまに来られて、『味噌カツある?』って言われることも。みなさんの思い出の中に食堂の味が残ってくれているのはうれしい。」

食べた生徒たちの反応も熱い。「めちゃくちゃ美味しいです。味噌を自分でかけられるのと、ごはんも多いし」「日替わりで週に1回しかないので、食べてみたいと思いました。めっちゃおいしいです」。世代を超えて愛され続ける味は、今日も高校生たちの胃袋をつかんでいる。

手書きメッセージとポイントカード——南砺福野高校の「優しい食堂」

南砺福野高校の学校前庭に面して建つ「なんとおいしい福野食堂」は、その名の通り、明るいカフェテリア風の空間だ。地元の精肉店が経営しており、20種類以上のメニューが並ぶ。

この食堂の特徴は、料理の美味しさだけにとどまらない。事前に予約を受けた料理には、スタッフが注文した生徒への手書きメッセージとイラストを添える。「書いてくれます。いつも、うれしいです」と、ある女子生徒は目を細めた。

食堂には意見を募るメッセージボードも設置されており、スタッフが一つひとつに回答している。「生徒さんの意見をひとつでも多く聞けるといいなと思って。美味しかったよとか、ありがとうございますって言われる時がうれしいですね」と、スタッフの吉田由香さんは話す。

生徒のリクエストから生まれたメニューもある。「ラーメンのチャーシューをごはんと一緒に食べたい」という声がきっかけで誕生した温玉のせチャーシュー丼は、今では定番の一品だ。

さらにこの春からは、生徒会の提案でポイントカードも導入された。生徒会の杉村直音さんは「食堂のお姉さま方に、食堂を盛り上げてほしいと言われて考えました」と経緯を明かし、同じく生徒会の酒井雄都さんは「ポイントカードが作られたことで、食堂に来たいと思う生徒が増えた」と手応えを感じている。スタンプを押す一瞬が、自然とスタッフと生徒の会話を生み出しているという。

食堂は、地域と生徒をつなぐ場所

2校の食堂に共通するのは、「食べ物を提供する」だけで終わらない姿勢だ。富山工業高校では朝から営業しており、朝食代わりに利用する生徒もいる。南砺福野高校では農業環境科の授業で育てた野菜を食堂のメニューに活用し、冷やし中華の具材として提供したこともある。

食堂は生徒たちの青春の記憶に刻まれ、卒業後も「あの味」として呼び戻される。地域に根ざした食と人の温かさが、毎日の昼休みをかけがえのない時間にしていた。

(富山テレビ放送)

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