名将の帰還で県内バスケに新風を FC今治高校女子バスケ部が躍動
「頭、めっちゃ使います」。県総体でベスト8の好成績を残したFC今治高校女子バスケットボール部の選手が、練習の感想をそう語る。
高度な戦術理解が求められる練習メニューに、日々頭を悩ませながらも着実に力をつけていく若い選手たち。
今春創部されたばかりのチームが、愛媛の高校バスケ界に新たな波を起こしている。

全国から集まる若き才能
昨年、今治明徳高校から校名が変わったFC今治高校明徳校。1906年創立の伝統校に、この春新たに誕生したのが女子バスケットボール部だ。
「この中で経験者の人!」との問いかけに全員が手を挙げ、「県外から来た人!」には15人中8人が挙手する。北海道、三重、広島、兵庫、高知、島根、香川から集まった選手たち。彼女たちが遠く離れた愛媛に集結した理由は一つ。

「一色先生にバスケを教えてもらいたくて」
「一色先生がここでチームを作るってなって、先生と一緒にバスケがしたいと思ってきました」と三重県出身の北川遊稀選手。北海道から来た曽我部琉依選手も「一色先生にバスケを教えてもらいたくて」と口をそろえる。
身長169cmのジャンプシュートを得意とする曽我部好花選手は四国中央市出身。「県外からうまい子が集まってくると聞いたので選びました」と地元愛媛から入部した理由を語る。

高校バスケ界に戻ってきた名将
その一色建志監督(63)は、2013年までの29年間、当時の聖カタリナ女子高校バスケ部を全国屈指の強豪へと育て上げた名将だ。
日本代表として東京・パリ両オリンピックに出場した宮崎早織選手も一色監督の教え子。2012年には宮崎選手らとともにインターハイとウインターカップで全国準優勝の偉業を成し遂げている。
その後、女子ジュニア日本代表チームや実業団を指揮し、2021年からは聖カタリナ大学女子バスケ部のヘッドコーチも務める一色監督。
高校バスケ界への復帰は約12年ぶりとなる。

「愛情たっぷりの先生」
「知っていることをすべて生徒たちに伝えています」と語る一色監督。練習では基礎技術の向上だけでなく、戦術理解やチームワークの強化に重点を置く。
「人の話は?」と問いかける監督に、選手たちは「イメージ、頭と心で聞く」と応える。ホワイトボードを使った詳細な戦術説明は、選手たちの頭脳をフル回転させる。
選手たちに「一色先生はどんな先生?」と尋ねると、「愛情たっぷりの先生」「普段は怖いけどギャグを言ったりして空気を和ませてくれる」「バスケットに愛情がある」と、その人柄を慕う声が返ってきた。

初陣から見せた底力
創部からわずか2ヵ月、1年生中心のチームで挑んだ県高校総体。
初陣ながら見事、県ベスト8の好成績を残した。
総体での敗戦を経験した選手たちは「緊張して思うように動けなくて、悔しい結果になってしまいました」「結果は悔しいけど、また次頑張りたい」と口にする。

次の目標は冬の全国大会・ウインターカップ
その悔しさをバネに、次の目標は冬の全国大会・ウインターカップだ。
「まずは出場すること、直接注意しあえる仲になりたいです」と曽我部琉依選手。北川選手も「3年生チームにも負けないぐらいの体力づくりをしています」と意気込む。
「ここでバスケットボールがしたい」という一心で集まった15人の若き選手たち。彼女たちの挑戦は始まったばかりだ。
