‟世界初”の快挙! 中土佐で「テナガエビ」の量産に成功

高知が誇る清流・四万十川。下流には「川エビ」と呼ばれるテナガエビが棲息している。
素揚げにして塩を振り丸ごといただく料理が人気。9月、このエビである快挙が!

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松下商店 松下昇平社長:
なんか『世界初』があんまり実感ないんですけども、『世界初』が(笑)

テナガエビの養殖での量産に成功したのだ。
今までに報告例がなく世界初とみられている。

養殖事業を行っているのは、中土佐町にある「松下商店」。

ここで松下社長のもとテナガエビの世話をしているのが、養殖事業部長の正岡千沙さん(21)。

中土佐町・水産商工課 市川文啓さん:
エサ取るのへたくそでね~こいつら

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
さっき取ったと思ったら食べながら落としていきよった

中土佐町・水産商工課 市川文啓さん:
(エビが自分の)手の使い方に慣れてない

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
1匹1匹にやっちゃりたいぐらいになる。惜しい!ってなる

正岡さんに飼育指導をしているのは、中土佐町水産商工課の市川文啓さん。
テナガエビの養殖に6年携わっているベテランだ。
松下社長と正岡さん、市川さん、この3人で快挙を成し遂げた。

「失敗したら終わるかもしれん…」 背水の陣で挑んだ養殖事業

1990年代のピーク時には40トンだった四万十川のテナガエビ類の漁獲量は、環境の悪化や獲り過ぎにより次第に数が減少。2014年には1トンにまで落ち込んだ。
2018年から禁漁期間が設けられているが、漁獲量は回復していない。

中土佐町は、2015年から県外企業と提携し、養殖事業に取り組んできたが成果が現れず、県外企業は2019年に撤退した。

2017年に地域おこし協力隊として大阪から移住してきた松下さん。
2020年4月に「松下商店」を立ち上げ町産の七面鳥「しまんとターキー」を販売している。

商店のスタートと同時に町からテナガエビ養殖事業を持ちかけられ、背水の陣で引き受けた。
「量産が成功しなければ9月にも事業を停止する」という期限を社長自ら決めていた。

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
プレッシャーがすごかったです。『気楽にやっていいよー』って言われるけど、やっぱり失敗したら終わるかもしれんっていうのもあったので

地元・大野見地区出身の正岡さんは、中学ではバレーボールに打ち込んでいたスポーツ少女で、高校卒業後は岡山の製鉄所に就職。テナガエビには縁も興味も全くない生活を送っていた。

仕事を辞め、大野見に帰ってきたあと、生まれた時から近所付き合いのある市川さんに誘われ養殖にかかわることに。
松下商店が事業を引き継いだ際、エビ養殖歴2年・21歳の若さで「養殖事業部長」に抜擢された。

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
まさか自分がエビ育てるとは思ってなかったです。周りにも『エッ?』ってなんか言われます

飼育が困難な「稚エビ」の増産 来春以降の販売を目指す

テナガエビは卵から1カ月ほどで孵化し、「幼生」とよばれる赤ちゃんの状態になる。
まだ足の発達が未熟なため、歩くことができず、後ろにしか泳げない。

幼生は、1、2カ月経つとエビの子ども「稚エビ」になる。
足が生えてきて、しっかりとしたエビの形になり動きも活発になってくる。
稚エビは、3、4カ月かけて5cmを超える出荷サイズとなる。

2019年まで、幼生は20万匹しか確保できなかったが、卵を産むメスの飼育環境を変えるなどして、なんと240万匹まで増やすことに成功!

その結果、これまで1万匹前後だった「稚エビ」も、9月上旬ですでに10万匹になり、事業として成立するほどの量産体制を築くことができた。

ただ気性が荒く、どうしても「共食い」をしてしまうため、「稚エビ」から大人のエビになれるのは5分の1ほど。
予期しないハプニングはしばしば起こる。取材した日の2日前にも…。

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
この槽は密度の限界がきて、おとついにいっぱい死んでしまった槽です

エビたちが予想以上に早く成長したため、密度が高くなり水質が悪化。
水槽にいる20%ほどが死んでしまった。
出荷できるまでエビが生き残れるための環境の整備など課題は山積みだ。

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
観察が大事ですね、やっぱり。見てないとわからんことも多いんで

中土佐町・水産商工課 市川文啓さん:
観察が大事って言えるようになってきたね

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
フフフフ! だってなんか、1日見んかっただけで、ちょっと不安になります

正岡さんは、2年後には「稚エビ」を10万匹から30万匹に増やし、生存率も高めたいと意気込む。

松下商店・正岡千沙養殖事業部長:
今年成功したので、だいぶ自信がついて、来年もっと育てようって思います

愛情と責任感のこもった松下商店のテナガエビは、このまま量産・生育が順調にいけば、2021年の春以降、販売を開始できる予定。

(高知さんさんテレビ)