企業選びで福利厚生を重視する傾向が、特に若年層で強いことが分かった。約半数が賃上げが期待しにくいと答える中で、生活支援につながる待遇への関心が高まっている。

専門家は、福利厚生が報酬の一部として再評価されていると分析している。

若者ほど「福利厚生に注目」企業選びの重要な視点に

働く皆さんに、会社が提供する福利厚生に迫った。

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給与、勤務地、業種と皆さん企業を選ぶ基準はさまざまだが、そんな中、65.9%と3人に2人が、福利厚生は「勤務先の企業選びの決め手の一つとなる」と考えているようだ。

こうした、“企業の選び方”について、総合福利厚生サービスを提供する「ベネフィット・ワン」が、民間企業の正社員20代〜60代の男女1000人を対象に実態調査を実施した。

長く働き続けるために「福利厚生は重要」かを尋ねてみると、「そう思う」が28.2%、「まあそう思う」が51.5%で、79.7%の人が福利厚生を継続勤務の条件に考えているようだ。一方で、「あまりそう思わない」は16.3%、「そう思わない」は4.0%となった。

物価高を上回る賃上げが望まれる中、なかなか難しい現状もある。

今後の賃上げの見込みについて聞いたところ、賃上げが「あると思う」が50.7%、「ないと思う」が49.3%で、ほぼ半々と拮抗する結果になった。

このような経済事情を反映してなのか、勤務先に対し、賃上げは無理でも、“福利厚生を拡充して欲しい”という声が58.3%と高く、特に20代では69.0%と若い世代の望む声が高くなっているようだ。

福利厚生は報酬の一部…新たな役割

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。 

堤礼実キャスター:
人材の採用や、育成に詳しい石倉さんは、福利厚生の充実について、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
福利厚生を会社選びの参考にしてる人は7割いますが、これは以前から変わらない傾向な気はします。ただ、以前と比べて福利厚生に対しての印象や、捉え方自体が異なっているのではないかと思います。

堤キャスター:
捉え方が異なるとは、どういうことでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
以前、会社の福利厚生といえば、日頃の仕事のご褒美というか、給与+αのようなイメージで、充実してれば嬉しいというものだったと思います。

ただ、今はどちらかというと、手取りや使えるお金が増えない中で、少しでも使うお金を減らす手段として活用できるもの、といったイメージなのではないでしょうか。

とすると、福利厚生も、報酬の一部のような捉え方になるので、それが会社選びの際に重視されるのは、当たり前と言えるかもしれないです。

人手不足は企業規模で格差…中小の雇用確保に課題

堤キャスター:
ただ、企業の規模によって、福利厚生の充実具合も違ってくるように思いますが、これについてはいかがですか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
物価高が進み、実質賃金が下がってる中で、使うお金を減らす手段として福利厚生が捉えられているならば、給与も福利厚生も、充実しにくい中小企業には、より人が集まらなくなってしまう懸念があると思います。

よく人手不足と言われていますが、実は分解してみると、企業規模で全く違うことが言えます。

堤キャスター:
具体的には、どのような違いがあるのですか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
5000名以上の大企業の有効求人倍率は0.34倍と超買い手市場で、人手不足で困っているとはいえない数字です。

一方、300名未満の中小企業では、約6.5倍と実際に人手不足になっている状態です。人手が本当に足らないサービス業などは、さらに求人倍率が高かったりするので、同じ業種でも、大都市と地方では雇用の状態は異なってきます。

市場の原理や、競争といえばそれまでですが、こういった本当に人手が足らない業界に人が移るにはどうしたらいいのか。これは政府が、もっと注力すべき課題なのではと思います。

堤キャスター:
福利厚生が企業選びのポイントのひとつになる一方で、その内容を把握している方は少ないかもしれません。それを会社の内外にどう発信していくのかも、問われているように思います。
(「Live News α」6月18日放送分より)

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