パラアスリート中道穂香選手、地元愛南町でトライアスロン初挑戦
「1人だと絶対走り切れないようなコースを、皆さんの応援のおかげでできた」。
先天性の障がいで生まれつき右足がないパラアスリート・中道穂香選手(24)が、故郷の愛媛県愛南町で開催されたトライアスロン大会に挑戦した。
地元の声援を力に変えて完走した彼女の挑戦の様子を追った。

幼少期から水泳で活躍、自転車競技でパラリンピック目指す
四国南西部の愛媛県愛南町を舞台に、今年で12回目を迎えたトライアスロン大会。
中道穂香選手は幼い頃から見てきた地元の大会を、トライアスロンデビュー戦に選んだ。
「(コース短縮など)いろいろ削りながらではあるんですけど、まず出場の一歩を踏み出すことができたので、自分のベストを尽くす」と意気込みを語った。

目指すは3年後のロサンゼルスパラリンピック出場
中道選手は幼少期から水泳を始め、中学・高校時代には国際大会に出場するなど活躍。
大学4年生からは自転車競技に取り組み、国内トップ選手の一人として3年後のロサンゼルスパラリンピック出場を目指している。
障がい者のトライアスロン競技は、スイム750メートル、バイク20キロ、ラン5キロと健常者大会の半分の距離規定ですが、今回はオープン参加でスイムとバイクにチャレンジする。

地元からの熱い声援
この挑戦に選手を育成する日本トライアスロン連合も注目している。
日本トライアスロン連合 富川理充理事:
「自転車を片足でこぐというのはかなりハードですし、義足で5キロ走るというと陸上のパラの選手でも結構大変ですし、あえてそこにチャレンジしたいということで、もう伸びしろしかないと思いますね」

地元出身の中道選手に多くの声援
会場では地元出身の中道選手の挑戦に多くの声援が送られた。
高校時代の元指導者:
「高校生の時から知ってて、一緒に体幹トレーニングとかしていろいろアドバイスさせていただきました。トライアスロンに出ると聞いて、さすがやな!と思いました」と語る。
小学校時代を知る地元の人は「小学校の時にびっくりしたのが、自分はハンディではないと、この体は。みんなと一緒に運動会のかけっこもやると、松葉杖で。もちろん一番最後ですよね。それでも楽しそうに。すばらしいですよね。みんな応援してました。」と当時の中道選手の姿を振り返った。

片足で挑むスイム、バイク、そして予定外のラン
いよいよスタート。
最初のスイムはほかの選手と同じ1.5キロを泳ぐ。
元々得意な水泳の強みを発揮し、参加290人中120位にあたる33分のタイムで上がってきた。
トランジットに入ってきた中道選手は「思った以上に前に人が泳いでいて難しかった」と初めてのトライアスロン・スイムを語った。

バイクにも挑戦!そして…
続くバイクは、左足をペダルに固定し、片足だけで自転車をこぐ。
きつい坂があるコースで、沿道からは「穂香がんばれ!」の声援が飛ぶ。
中道選手はパラトライアスロンで採用される20キロを見事に走り切った。

会場周辺のコースを走ることを決めた
バイク競技を終えた後、審判員と相談し、会場周辺のコースを走ることを決めた。
体力に余裕があればスイム、バイク、ランの3種目を経験することも大会出場の目的でもあったからだ。
沿道で待っていた母・美津さんが「走るつもりじゃなかったんよね」と驚くと、中道選手は「つもりじゃなかったけど(競技用義足の)用意はしておいた」と応えた。

限界への挑戦、新たな課題も
スタートから約2時間、多くの声援を背に受けてトライアスロンをフィニッシュした。
限界に挑戦した”鉄人”の仲間入りだ。
中道選手は「バイクは想像以上にきつかったんですけど、1人だと絶対走り切れないようなコースを皆さんの応援のおかげでできたと思います」と振り返った。
そして、
「ランはやるつもりはなかったんですけど、トランジットの練習もしておいた方がということで少しだけ走りましたが、2種目終わった後の3種目のきつさがわかったので、これからの練習に生かしたいと思います」と、新たな課題も見えてきた様子だ。

パラリンピックへの道
「今は基本的にはパラサイクリングに軸足を置いているんですけど、パラサイクリングのもうワンステップ先という位置づけで、パラトライアスロンにも取り組んでいけたらいいな」と今後の展望を語る中道選手。
目標は3年後のロサンゼルスパラリンピック出場だ。

世界に向けた照準を合わせていく
パラサイクリング、パラトライアスロンと様々な挑戦を重ねながら、世界に向けた照準を合わせていくことになる。
6月末には自転車競技の全国大会に挑戦する予定で、新たなステージでの活躍が期待される。
トライアスロンデビューを果たした愛南町のパラアスリートは、地元の声援を胸にさらなる高みを目指して走り続ける。
