夏場は特に注意が必要な食中毒。その要因や主な症状、予防法を専門家に聞きました。

◆細菌は高温多湿を好む

食中毒は、1年のうち夏に最も発生件数が増えています。その理由について福井県健康福祉部の五十嵐映子さんは次のように説明します。
 
「食中毒の原因は細菌やウイルス、自然毒がある。細菌は高温多湿を好むので、気温も高く湿度も高い夏は細菌が増えやすく、食中毒が多い」 


原因となる細菌は主に生肉などに付着していて、体内に入ると腸の中で増殖し炎症を起こします。
 
夏の食中毒を引き起こす細菌について五十嵐さんは「カンピロバクターによる食中毒が多い。他には、腸管出血性大腸菌やサルモネラ菌、ウェルシュ菌という食中毒も起こる」とします。

細菌による食中毒の原因で最も多いカンピロバクターは加熱していない肉やレバーを食べることで感染します。ニワトリが最も多く、牛、豚などの腸内にも生息しています。新鮮な鶏肉でもカンピロバクターが検出されていて、新鮮だからといって安全とは限りません。

続いて注意が必要なのが、牛の腸に生息しているO-157などの腸管出血性大腸菌。わずか100個程度の菌でも感染し強力な毒素を出すため、抵抗力の弱い高齢者や子供が感染すると合併症を引き起こし、死に至るケースもある恐ろしい細菌です。
 
さらに、サルモネラ菌は人や家畜などに広く分布していて、主に卵や鶏肉が原因で感染します。


◆呼吸困難になる場合も

食中毒の主な症状についても、五十嵐さんに聞きました。
 
「腹痛、下痢、嘔吐などの症状が出る。原因物質によっても違うが、早いもので数時間から長いと10日くらい症状が出るものもある」
 
カンピロバクターが原因の場合は、1000人に1人の割合で手足の麻痺や顔面麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があります。症状が表れたら悪化する前に、早めに医療機関を受診することが大切です。


◆食中毒予防に必要な3つのポイント

では、どのようにして食中毒を予防すれば良いのでしょうか。五十嵐さんが、3つのポイントを教えてくれました。
 
【食中毒の三原則】
1.細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」
食材に細菌を「つけない」ために―
・調理前に手を洗い食材も丁寧に洗う。
・肉や魚を切った包丁やまな板はしっかり洗う。
 
気を付けたいのが食材を保管する場面です。「肉や魚を買い時間が経つと食材から汁が出る。それが生野菜などに付くと体に入ることもあるので、肉や野菜は袋などに入れて、他の食材につかないように注意することが大切」だということです。


2.食べ物に付着した細菌を「増やさない」ために―
・高温多湿の環境では温度管理が大切。調理前の食材や調理後の食品を長時間室温で放置しない。
・調理後すぐに食べることができない場合は、冷蔵庫や冷凍庫で保存する。
  
五十嵐さんは、こんなひと手間も必要といいます。「冷凍と冷蔵を繰り返さないこと。細菌の増殖を抑えるため、小分けにして冷凍する方が安全」

3.食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」ために―
・肉や魚を調理するときはしっかり中まで火を通す。
・残った食品を温め直して食べるときも、十分加熱する。 
「細菌は熱に弱いため、加熱を十分にすることが重要。目安としては、肉の中心温度が75度以上で1分以上加熱すること。鶏肉は中までしっかり白くなっていることを確認してほしい」


冷蔵庫に物を詰めすぎると冷気の循環が妨げられるため温度管理が難しくなります。10度以下で保管できるよう、庫内は適度に隙間を開けておくことが重要です。夏を迎える前に、冷蔵庫の整理整頓をしておくのも効果的です。
 
「つけない、増やさない、やっつける」という食中毒の三原則で予防して、楽しい夏を過ごしましょう。

福井テレビ
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