世界最大級のテックイベントがフランス・パリで開催され、日本からも30社以上が参加した。触覚センサーやAIによる水産養殖のスマート化など、日本の技術が注目を集めている。専門家は、社会課題のデータ化と技術の組み合わせが、今後の成長の鍵だと語る。

世界最大級のテックイベントが開催

フランス・パリで11日、世界最大級のテックイベントが開催された。日本のスタートアップの技術に、世界が注目している。

日本から多くの企業が参加しているテックイベント
日本から多くの企業が参加しているテックイベント
この記事の画像(22枚)

取材班:
世界最大級のテックイベント。ヨーロッパ市場への進出を目指し、日本からも多くのスタートアップ企業が参加しています。

フランス・パリで、テクノロジーイベント「VIVA TECHNOLOGY(ビバ テクノロジー)2025」が開催された。

国内外から1万3000を超える企業などが一堂に会し、AIやロボティクス、サステナビリティなどの最新テクノロジーを紹介。日本からも30社以上が参加した。

こちらのブースで行われていたのは、人間の触覚に着目した実験だ。目を閉じたスタッフが空のコップを持っている。

「じゃあ水を入れますね」

手前のピンクのコップに水が入れられる
手前のピンクのコップに水が入れられる

水を入れるのは、手前に置かれたピンクのコップだ。

「入りました?」
「入ったと思います」

「半分くらい?どうぞ目を開けてみてください。」

これは、コップの底に取り付けられたセンサーに水が当たり、その振動がもう片方のコップに伝わることで、まるで水が注がれたような感覚になるというもの。

自動車の工場などで既に実用化されていて、作業員の指先のセンサーから得た情報をもとに、AIが作業状況を確認するという。

ロボセンサー技研・大村昌良社長:
私がやった作業は完全だということがAIが判定してくれて、それは「安心してお客様に届けられる製品」になるということで、喜ばれています。フランスはやっぱり自動車メーカーさんとか、航空機産業盛んですので、そちらのメーカーさんへ使っていただきたいということで、展示会に参加させていただきました。

一方こちらの企業のテーマは、「水産養殖のスマート化」だ。

水中に設置したカメラを通じて、魚の大きさや数、健康状態などを、AIがリアルタイムで解析する。

自動化による人件費などのコスト削減のほか、餌のタイミングや量を最適化することができ、病気の早期発見なども可能になった。

NeuralX・仲田真輝CEO:
(病気などが発生すると)数年かけた先行の投資金額が、全て水の泡になってしまう。(AIは)早い段階で検知ができて、その対策ができる。そういったところで、ビジネスというリスクを下げてあげるようなメリットを提供している。

(パリは)マーケットとしても、意外に面白いマーケット。アパレルとかハイブランド有名ですけど、(水産業など)第一次産業もあるということを気づけたのは、大きな収穫です。

フィンランド人来場者:
ヨーロッパを拠点とする企業が、日本の技術を活用する可能性は大いにあると思います。

フランス人来場者:
日本の技術は高い評価を受けており、イメージは「無駄のない技術」で、「謙虚」でありながら「効果的」なものと考えられています。私は、日本は充分に存在感を示せていないのだと思います。

ヨーロッパのテック市場で、日本のスタートアップ企業が存在感を発揮することができるのか。新たなビジネスチャンスの開拓に向けた挑戦が始まっている。

信頼性高い「社会課題のデータ化」が世界での強みに

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
日本のパビリオンにも、多くの方が集まっていましたね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
日本のスタートアップにとって、海外のお客さんを獲得する良いチャンスになれば良いですね。

これからAIの時代ですから、日本の企業のもともとの強み、評価された技術力に加えて、AIにどういったデータを読み込ませるか、データ力というのも一つ重要な競争のポイントになってきます。

日本のスタートアップがこれから世界で成功するためのポイントは、「社会課題のデータ化」にあると思います。

海老原キャスター:
どういったことが重要になっていくのでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
日本は課題先進国と言われますが、一方で、実はデータの信頼性や安全性の評価が高いです。日本の社会課題を良質なデータに変えることができれば、一つの競争力になっていくと思います。

例えば、社会課題の典型例として少子高齢化ありますが、中でも重要なのがヘルスケアの分野です。ここで認知症・アルツハイマーや、睡眠改善に関して人体のデータを蓄積してソリューション化できると、大きな強みになると思います。

ロボティクスが全身データで人手不足に対応

海老原キャスター:
人手不足については、いかがでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
人手不足は、ものづくりや介護の現場など、あらゆるところで課題になっていますが、そこでの期待はロボティクスです。

物の動きだけではなくて、人の体の全身運動のデータをロボットに読み込ませると、一つの強みになり得ます。

このように、課題の良質なデータを取り、元来持っている技術力と掛け合わせることによってソリューション化することができれば、世界のあらゆるところに展開することが可能になってくると思います。

日本のスタートアップを通じて、日本が課題解決の先進国になる突破口になってほしいと思います。
(「Live News α」6月13日放送分より)