明治初期、日本で初めて西洋式工法で造られた突堤が、福井県坂井市の三国サンセットビーチにある。国がオランダから招いた技師・エッセルが設計したことから「エッセル堤」とも呼ばれている。この設計者のひ孫に当たる男性が5月末に現地を訪れ、曾祖父直筆の設計図面を寄贈した。
オランダ人技師エッセルが西洋式工法で設計
古くから北前船の交易で栄えた三国港は、上流から流れ込んだ土砂が堆積し、船の出入りが阻害される事が問題となっていた。住民らの要望を受け、土砂を効果的に排出するため、当時、日本で初めて取り入れられた西洋式の工法で突堤が造成された。

設計したのは、1878年に国が招いたオランダ人技師のエッセル。同じくオランダ人技師のデ・レイケの指揮の下、東尋坊の一帯から岩を切り出して工事が進められた。

1882年に完成したこのエッセル堤は「明治三大築港」と称され、2003年には国の重要文化財に指定されている。時代を超え、荒波に耐え、約150年が経った今も現役で港を守り続けている。

ひ孫も水利工学の研究者
5月30日、そのエッシャーのひ孫で水利工学を研究しているオランダ人のヨリス・エッシャーさんが、坂井市の龍翔博物館を訪れた。

手にしていたのは、設計の際に作られた図面。エッシャーのサインも書かれている。図面は全部で6枚あり、突堤を築くための構造や東尋坊や雄島から切り出した岩を船で運び、どう下ろすかなど、イラストも交えて鮮明に記録されている。

市長も驚いたサプライズプレゼント
当初はこのうち1枚だけが坂井市に寄贈される予定だったのだがー
「全部あげます」
何とエッシャーさん、6枚すべてを寄贈すると申し出たのだ。

坂井市の池田禎孝市長は思わず「びっくり!アメージング!」と感激。「150年の時を超えて見られることはとてもうれしいです」と謝意を伝えた。

エッシャーさんの思いは…「寄贈の約束を果たせ、図面を無事に博物館に寄贈できて誇りに思う。日本の子供たちに突堤をどう造ったかプロセスを学んでほしい」

寄贈された図面は、秋に龍翔博物館で開かれる特別展で公開される。