2021年、北海道旭川市で当時14歳の女子中学生がいじめを苦に自殺した問題で、遺族側が市の対応に問題があったなどとして1億円あまりの損害賠償を求めた裁判が始まった。
旭川いじめ自殺問題で裁判始まる
旭川市の中学2年生、当時14歳で亡くなった広瀬爽彩さん。
2021年2月に行方不明となり、1か月後に旭川市内の公園で凍死した状態で見つかった。

あれから4年、遺族側が市側に約1億1500万円の損害賠償を求めた裁判が6月6日に始まった。
遺族側は、学校や市教委がいじめやその可能性を認識しながらも本人側の問題として責任転嫁し、認知することを回避したなどと主張している。
裁判には双方の代理人弁護士のみが出廷し、約5分で閉廷した。

なぜ裁判にいたったのか。
当初、旭川市教委は「いじめの重大事態」と認定し、第三者委員会が調査を開始。

自殺未遂を起こした件を学校が情報共有せず対応を怠ったなどと指摘したものの、「いじめと自殺の因果関係は不明」とした。
これを不服とした遺族側の要望を受け、市は「再調査委員会」を設置。
その結果―
「いじめ被害が存在しなければ、当該生徒の自殺は起こらなかった」(再調査委員会 野村武司副委員長)

再調査委員会は学校の内外で受けた7つの行為を「いじめ」と認定し、自殺との因果関係を初めて認める報告書を市に提出した。

後日公開された報告書では、爽彩さんの同級生が「大食い女」「あたおか」などと指摘したり、爽彩さんの行動を真似して笑いをとっていたことなどがいじめの詳細としてまとめられていた。

さらに学校側の対応の不備も指摘された。
「関係した生徒の“問題行動”として処理しようとし、“いじめの問題にせず終結したい”という意図が強く働いたと思われる」(野村副委員長)

再調査委員会の指摘に元校長は反論― 異論出る中での裁判に
しかし再調査委員会のこの指摘に、元校長が反論する事態に。
「学校は対応を怠ったとしていますが、これはいわれなき非難です」(爽彩さんの中学校の元校長 金子圭一さん)
金子圭一さんは、爽彩さんが通っていた中学校の元校長だ。
2025年3月のシンポジウムと4月の会見で反論した。
元校長は、爽彩さんに話を聞くなど適切に対処したと主張。
これに対し旭川市長は。
「遺族関係者の心情に一定の配慮があってしかるべきだった」(旭川市 今津寛介市長)

再調査委員会が認めたいじめと自殺の因果関係や、市・学校側の責任に対し、いまだ異論が出る状況で始まった裁判。
市教委側は「個人情報の観点などから現時点では主張を明らかにしない」としているが、一部を争う方針を示している。

遺族側は。
「原告として対応方針についてコメントできる段階にありません」
司法の場で市側の責任はどこまで認められるのか。

いじめや不登校に悩む子どもや保護者が相談できる窓口がある。
子ども相談支援センター:0120-3882-56(24時間、無料)
一人で悩まずに相談してほしい。
