パナソニックが5日、家電再生工場を初公開した。分散していた作業場所を1カ所に集約することで、 生産性の向上を図る。洗濯機やテレビなどの中古家電は、技術者が検査・修理し、再び市場に送り出す。専門家は、再利用による環境負荷の低減と消費者の選択肢拡大に期待を寄せる。

再生工場の一拠点化で生産効率を向上

パナソニックが、家電の再生工場を初めて公開した。

木材を多用した印象的な工場
木材を多用した印象的な工場
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「環境の日」の5日、パナソニックが栃木・宇都宮市で公開したのは、木材を多用した印象的な工場。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション・竹田恭介宇都宮工場長:
家電を再生するという「リファービッシュ(修理)」を通じて、返品等々があった商品を再生するといった業務を行っています。

パナソニックが初公開したのは、自社製家電の再生工場「Panasonic Factory Refresh」。

初期不良が確認されたものや、小売店での展示品など、「まだ使えるのに廃棄・リサイクルされてきた製品」をまた使えるように再生している。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション・竹田恭介宇都宮工場長:
やはり今の社会問題である地球温暖化、特に家電の循環といったようなところ、サーキュラーエコノミーの循環型の社会を構築するといったところに、「リファービッシュ」を通じて社会貢献できるかなと。

テレビやデジタルカメラ、洗濯機など7カテゴリーが対象となる。

約20人の「マイスター」と呼ばれる技術者が、傷や匂い・汚れのレベルを確認し、一つ一つ手作業で洗浄していく。

経年劣化が気になる排水ホースなどは、新品に交換する。

液晶テレビは、心臓部である基盤まで確認する。

2024年4月に開始した家電の再生事業。 当初は、工場内に分散していた各カテゴリーの製造場所に商品を運び込んで作業する必要があった。それを今回1カ所に集約することで、 生産性の向上を図っている。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション・竹田恭介宇都宮工場長:
これからの時代は「作る」といったようなものだけではダメかなと。再生事業・環境取り組みといっても、赤字では続けられない。しっかりと黒字にすることが必要となる。環境貢献ではあるが、お客様の求めているコスト・品質、そういったところでメーカーとして応えていきたいなと思っています。

新しい家電で暮らしを豊かにしてきたメーカーが、あえて今提案する、“家電を捨てない暮らし”。資源循環型のモノづくりに注目だ。

リファービッシュ品が循環経済を後押し

「Live News α」では、日本総合研究所チーフスペシャリストの村上芽(めぐむ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
パナソニックのリファービッシュ、どうご覧になりますか。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
SDGsが広く知られるようになり、大量生産・大量消費・大量廃棄をやめようという動きが広がっています。

今回の試みも、家電製品について、循環型の経済の輪を、より強く回そうという試みかと思います。

堤キャスター:
より強くとは、どういうことでしょうか。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
これまではリサイクルというと、法律に基づいて、エアコン・テレビ・冷蔵庫といった大型製品から、携帯電話やゲーム機のような小さいものまで、製品としての役目を終えると、回収・解体されて、金属などの素材別に、新しいものに生まれ変わっていました。

今回の「再生」では、例えば洗濯機なら洗濯機として、そのまま使えるよう綺麗にしたり、修理したりして「リファービッシュ品」として販売されます。

解体するリサイクルに比べて、その工程に掛かる環境負荷が少なく、循環の輪を強く回すことになります。

再生品に広がる安心と選択肢が消費者の支持を生む

堤キャスター:
消費者には、どんなメリットがあるのでしょうか。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
これまでも、パッケージ不良などの「訳アリ商品」は、家電量販店の「アウトレット」コーナーなどで販売されていました。

今回のように、家電メーカーが検査した「再生品」にメーカー保証を付けて販売するという動きは、消費者にとって選択肢が1つ増えることになります。

特に、洗濯機のようなちょっと大きめで、中身がどうなっているか分かりにくい製品の場合、メーカーで検査されていると安心感につながります。

堤キャスター:
今回のような取り組みが、広がっていくといいですね。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
消費者が手元にあって愛着のある製品を、修理して使い続けやすくする。そんなサービスの開発や普及に期待したいと思います。

最近の家電製品は、性能が高く、賢いものが多いため、壊れてしまうと、自分で修理するのが基本的には難しいです。

それが、例えば冷蔵庫のように、家庭のインテリアに馴染んでいるものは、外側はそのままで、中身については、省エネ性能のさらに高いものにできないかなど、循環型の経済に向けて、新たな取り組みが次々に出てきて欲しいと思います。
(「Live News α」6月5日放送分より)