2020年7月豪雨から間もなく5年です。甚大な被害を受けた芦北町の川では一時、ホタルが減少していましたが、徐々にその数が戻り始めています。地域を優しい光で包む今年のホタルを先週、取材しました。
球磨村に隣接する芦北町東部の吉尾地区。
緑豊かで静かな山の中を流れるのが球磨川の支流、吉尾川です。午後7時半を過ぎると…ホタルが舞い始めました。今年はこのような光景をつくり出したホタルですが、2020年7月豪雨の前はもっと多くのホタルが飛び交っていたそうです。
【岩城 一巳さん】
「豪雨の前と比べると(今の数は)おおげさに言うと10分の1。いっぱい出る所で半分くらい」
こう話すのは、吉尾川沿いの温泉地で立ち寄り湯を営む、『湧泉閣』の岩城一巳(いわきかずみ)さんです。
5年前の豪雨でこの地域は甚大な被害を受け、『湧泉閣』も川からあふれた水や泥で覆われました。
被災直後は再開が危ぶまれましたが、2021年秋に〈復活〉。
しかし、ホタルの生育環境がすぐに戻ることはありませんでした。
「(護岸が)壊れてしまって流れ自体がこう(陸に)来て。向こうも壊して別の川ができたような感じ」
田んぼだった場所にあるはずのない砂利は、この時の爪痕です。
5年前、急激に変わった環境でホタルは、ほとんど見られなくなりましたが、おととしごろから徐々に現れるように。芦北町によると、吉尾川の上流にある今村川(いまむらがわ)でホタルの幼虫が食べるカワニナに餌を与える取り組みなどが行われ、そうしたことも復活の要因とみられるということです。
「きょうは、特別うれしい。雨が降っていたから(ホタルが)出ないかなと思っていたので。感謝、よかった。(被災直後は)〈どうなるんだろう〉とか〈これから先どうやって生活したらいいんだろう〉とかそういうのばっかり頭に浮かんで。〈本当に(ホタルが)帰ってくるかな〉と心配していたけれど、ホタルも出てくるようになったら〈段々また元に戻っているな〉と感じて。気持ちの上でも穏やかになった」
豪雨に負けず復活しつつある吉尾地区のホタル。
今年は今週いっぱい楽しめそうです。