鹿児島県内は梅雨入りし、本格的な雨のシーズンを迎えました。
梅雨入りしたこの時期に、多くの水害が発生してきたのが川内川流域です。
命を守るために川の治水工事が進む一方で、その工事をまちづくりにも生かす取り組みが行われています。
防災とまちづくりの両立の試みを取材しました。
5月、鹿児島県薩摩川内市の河川敷で行われた水防訓練。
自衛隊や各地の消防など各関係機関からあわせて約500人が参加し、大雨に備えました。
薩摩川内市を流れる川内川。
全長137km、九州で2番目に長い一級河川です。
普段は豊かで美しいこの川も、その歴史は大雨被害とともにあります。
国土交通省 川内川河川事務所 流域治水課・永谷恵一課長
「平成18年(2006年)の7月の豪雨での浸水被害、川内川の流域全体で、家屋の浸水戸数2300戸を超えるような大規模な浸水被害も発生したというのが近年の大きな被害です」
近年では2021年7月の豪雨で排水用ポンプが故障し、薩摩川内市で浸水被害も発生しました。
川と共にある街。
自然と共生するためにどんな工夫がされてきたのかー
川内川下流にある向田地区を、治水工事を行う川内川河川事務所、永谷さんと歩きました。
永谷課長
「こちらが(川内川と)支川の隈之城川が合流するところ」
美川愛実キャスター
「それぞれの流れが合流して川幅が一段と広くなっているのがわかりますね」
隈之城川と川内川が交わる向田地区。
堤防の強化と合わせたまちづくりの工事を約7億4000万円をかけて行いました。
斜面の一部を活かした大きな滑り台に遊具も整備され、晴れた日には地元の保育園に通う子どもたちの姿もあります。
保育士
「いつも保育園でお散歩をするのが日課になっていて、ちょっと遠いが公園に来ることも度々ある。(川内川は)川内のシンボルじゃないけど大きい存在」
この一角には新たなカヌーの倉庫も。
水上スポーツのイベントでの活用も進みます。
そんな中、今まさに工事が進むエリアが、天辰地区です。
永谷課長
「こちらは治水対策と合わせてまちづくりの整備を進めているところ、あちら側を見て頂くと土の山が見えると思うが、あれがもともとあった堤防になります」
こちらは事業開始前の2018年の写真です。
堤防は整備されていましたが、2025年3月の写真では、川幅が広くなったのが分かります。
新たに整備されたスペースには防災以外にも活用方法があります。
永谷課長
「上流側はどちらかというとグラウンドとして野球ができるような目的、下流の緑色になっているところは多目的広場として、芝生広場みたいな形の利用を考えています」
美川アナウンサー
「それぞれ用途に分けて使い分けもできるスペースになっているんですね」
2025年度中の工事完了を目指すこのエリア、利用を楽しみにする声も聞かれました。
70代男性
「夏は花火大会があったり、グランドゴルフしたいと思っている」
実は、このまちづくりへの期待ともとれる変化が数字にも表れていました。
こちらは区画整備が進む天辰地区の人口を示すグラフです。
2014年から10年も経たない2023年には2倍近くに増加。
この日取材した河川敷のそばでも住宅の建設が進んでいました。
永谷課長
「洪水の危ないときにはきちんと身を守る行動を、それ以外の日々の時間は穏やかな川内川を見て活用していただき、地域の良い憩いの場になっていければと思います」
整備が続く防災設備。
いざというときに住民を守る一方で、何気ない日常と共生する新たな形も見えました。