「IBD」という言葉を聞いたことはありますか?「IBD」は病気の一種で日常的に繰り返す下痢や腹痛、血便などの症状が特徴です。指定難病の一つで、病気の原因は分かっていません。若年層の発症が多く全国で40万人の患者がいると推定されています。安倍元首相が患っていた病気としても知られています。

身近に潜むIBDですが、この病気について知っているのは人口の1割に留まるという調査もあります。こうした中、病気への理解を広げようと取り組む金沢の医師を取材しました。

金沢市片町2丁目の「消化器IBDクリニック」。県内で2人しかいないIBDの専門医、松田耕一郎医師です。

「ここが内視鏡室」「まだ全然使っていないですけど」「これ外した方がいいですね」

70年前から代々続く小児科にIBDなどを診察できる専門のクリニックを併設し、2日にリニューアルオープンしました。

松田医師:
「IBDクリニックという名前にするとIBDってなんだというのを若い人たちはスマホで調べたりしますよね。最初は職員からだいぶ反対されていましたけど認知度上げないと色々不幸になる人たちがいるので。」

若年層に増えている「IBD」。全国で40万人の患者がいるとされる指定難病です。IBDとは炎症性腸疾患の略で潰瘍性大腸炎とクローン病2つの疾患を総称した病名です。どちらも腸を中心とする消化管粘膜に炎症が生じる疾患で激しい腹痛、血便、1日に数十回の下痢を引き起こすこともあります。原因は不明。誰にでも起こりうる病気ですが、調査によるとIBDについて知っている人は人口の1割にとどまっています。

一方、この病気は継続的な治療や周囲からの理解があれば大きなハンデを背負わずに日常生活が送れると松田医師は強調します。

松田医師:
「周りの理解があれば通常に生活ができる、学習ができる、仕事ができるっていうふうな理解があれば、より良い生活になるかと思います。例えばトイレの近くに教室の一番後ろの出口の近くにすることで配慮してもらうとか和式トイレで苦労する方もいるので洋式トイレに変更してしまうことも大事。」

しかし、広く知られていない病気であるために様々な弊害が生じているといいます。

松田医師:
「どんな病気かわからないってなるとやっぱり人ってわからないことに対してはすごく恐怖を抱いたり不安を抱いたりするので、就労の面ですごく問題になるし出産育児とか結婚とか、そういうことにはすごく大きな問題が常に潜んでいます。」

この日クリニックのオープンを祝いに来たのはIBD患者の高木江里子さん。

高木さん:
「(お菓子)これ持ってきました。」
Q 高木さんが作った?
「はい。」

松田医師:
「体調的にはどう?」
高木さん:
「張りが前良くなかったのがだいぶましになった。」

高木さんは合併症で腸が狭くなり一部を摘出しています。1日に数回下痢が起きるほか血便による貧血や倦怠感があるといいます。元々会社の栄養士として働いていましたが…。

高木さん:
「特に隠したりはしていなかったので『こういう病気があります、それでもいいですか』じゃないですけどそういうスタンスでやってきたけどやっぱりトイレばっかり行っているよねって言われるとやっぱりわかってもらえないんだなと思ったりしました。理解がないわけではないけど自分が気を遣う場面もたくさんあるので仕事が結構ストレスになることが多かったです。」

栄養士の仕事を辞め今は自分のペースで仕事ができるよう手作りのお菓子を販売しています。高木さんはまず病気を知ってもらうことが患者が救われる第一歩だと話します。

高木さん:
「見た目ではわからないのでだらけていると見られなくはないんです。そういう風に言われると自分がだらけていると思ってきちゃう。怠けているわけではない、本当にしんどいんだ、体力の部分で眠気がくるんだよというそういう部分を知ってほしいです。」

5月17日、IBDについて正しく知ってもらおうと松田医師が啓発イベントを開きました。IBDをテーマにした啓発イベントは北陸で初めてです。

松田医師:
「こういう啓蒙活動を通して僕の隣にそういう患者さんがいるかもしれないということだけでもわかっていただけると本当にそういう患者さんが助かる。」

少しでも患者が生きやすくなるように。松田医師の活動は続きます。

石川テレビ
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