生鮮食品などを扱う卸売市場が、全国で再編や閉鎖に追い込まれるケースが出ています。背景には、直接取り引きの拡大やコロナ禍から続く飲食業の不振があるようです。こうした中、小浜市の中央卸売市場の消費者ニーズをつかんだ企画をが人気となっています。地域の活性化にもつなげようという取り組みを取材しました。
小浜市川崎地区にある総合卸売市場。仲買人ら専門業者が訪れるこの施設に、開場前から市民たち長蛇の列を作っていました。
人だかりの先にあったのは、1パック250円のイチゴ。水菜はなんと、1袋50円。皆さんのお目当ては“破格の商品”の数々だったのです。
買い物客はー
「スーパーより何十円か安い」
「いまは果物とかも高いから。この間も買ったけど、おいしかった」
小浜市の中央卸売市場が月1回開催している「市場deマルシェ」は、消費期限が迫ったものや形やサイズが規格外となった「理由あり商品」商品を販売するイベントです。
イベントを始めたのは2年前。フードロス削減が大きな目的でしたが、折からの物価高騰が追い風となって大人気に。イベントはすっかり定着し、5月の来場者は過去最高の800人を記録しました。
小浜市総合卸売市場の斎藤睦美市場長は「初めは客が少なくて協議会でも毎月はどうかという意見があったが、継続が大事ということで2年目以降も毎月開いていたら、今年になって野菜の高騰があり、特に客が増えて定着した。市場としても廃棄する商品を売ることで売上になるし、客にとってもいいのでウィンウィン」と話します。
そもそも卸売市場は、全国から生鮮食料品を集めて小売店や飲食店などに販売する拠点です。本来の役割は、商品の安定供給と競りなどを通じて適正な価格を形成することです。
しかし、最近は卸売市場を取り巻く状況も厳しさを増しています。
全国にある地方卸売市場の状況をまとめたグラフでは、取扱金額は平成の初期をピークに年々減少。それに伴って卸売市場の数も減少傾向となっています。
斎藤市場は「年々厳しくなっているバックボーンには人口減少があり、さらに生産者が直で売ったりネットで購入できたりと市場を通さない商品が増え、市場離れが進んでいる。コロナ禍は厳しく、去年あたりから回復するか期待したが戻ってないのが現状」とします。
こうした厳しい現状を打破しようと始めたのが「市場deマルシェ」でした。スタートから丸2年が経過し、市場と関連業者でつくる協議会では、より多くの人に来てもらおうと毎月、反省点や改善点を話し合っています。
協議会の会長を務める赤井健芳さんは、市場内で青果店を営んでいて、イベントの効果を実感しています。
赤井会長は「客が多いとこちらにも波及があり、だんだんと客が増え喜んでいる。小売り業は減ってきていて、耐えて頑張っている状況」と話します。
イベントに訪れた客の要望に応え、2024年12月から、市場では休みの日を除く平日の週5日、「理由あり商品」を販売するようになりました。
イベント人気の高まりを受けて、市場だけのにぎわいにとどめず「周辺地域の活性化につなげる」という新たな目標も見え始めています。
赤井会長は「イベントによって市場へ客に来てもらうことで、川崎地区の色んな店にも行ってもらえる」と期待しています。
斎藤市場長は「関連店舗、周辺の事業者にもイベントで多くの人が来ることで定着し、一定の波及効果がある。うちがこの川崎地区を引っ張っていかないとと思っている。市場の活性化はもちろん川崎地区の活性化、賑わい創出を最終的な狙いとしている」とします。
インターネット販売や生産者の直接販売の拡大で年々、縮小している地方の卸売市場。格安商品で消費者のニーズをつかみ、にぎわいを地域の活性化につなげる。小浜の取り組みは卸売市場の生き残り策の一つと言えそうです。
小浜市総合卸売市場がある川崎地区は、小浜漁港があり、水産物を加工する工場や物販施設、飲食店など多くの事業所が集まるまさに「食のまち小浜の台所」といえるエリア。市場を拠点とした賑わい創出は、まち全体の活性化にも繋がると期待されています。