長崎市の爆心地近くにある浦上教会の鐘が復元し、原爆で破壊されてから初めて一般公開されている。アメリカのカトリック信徒500人以上からの浄財によって、被爆80年にあわせて鐘の復元が実現した。

「どんな鐘の音が鳴るのか楽しみ」

一般公開は、5月24日から長崎市の浦上教会そばにある原爆遺物展示室で始まった。

一般公開は6月1日まで
一般公開は6月1日まで
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鐘は被爆80年となる2025年、アメリカのカトリック信徒たちから贈られた。鐘楼に取り付けられる前に一目見ようと、信徒や観光客など多くの人が見物に訪れている。

一目見ようと多くの人が見物に訪れている
一目見ようと多くの人が見物に訪れている

浦上教会教会学校の児童は「思ったより大きくて、すごいと思った。これからどんな鐘の音が鳴るのか楽しみ」と話す。

マンハッタン計画に参加した医師の孫に復元を提案

浦上教会には元々、2つの鐘楼に大小の鐘が吊るされていた。

被爆前の浦上教会(長崎原爆資料館 所蔵 池松経興氏 撮影)
被爆前の浦上教会(長崎原爆資料館 所蔵 池松経興氏 撮影)

しかし、アメリカが投下した原爆によって、教会も、そして北側の鐘も大きく壊された。片方の鐘楼は、80年経った今も空のままだ。

被爆二世の森内浩二郎さん(72)が復元を持ちかけて実現した
被爆二世の森内浩二郎さん(72)が復元を持ちかけて実現した

被爆二世で浦上教会の信徒、森内浩二郎さん(72)さんは「父親からずっと原爆の話を聞いていた。その中の1つに教会の鐘があった。森内さんは被爆二世で、浦上教会の信徒だ。被爆者である父親から原爆の話を聞いて育った。教会の鐘についても聞いていたという。

2023年、アメリカ・ウィリアムズ大学のジェームズ・L・ノーラン・ジュニア教授と出会った
2023年、アメリカ・ウィリアムズ大学のジェームズ・L・ノーラン・ジュニア教授と出会った

2023年、長崎を訪れたアメリカ・ウィリアムズ大学のジェームズ・L・ノーラン・ジュニア教授と出会い、鐘の復元を提案した。

ノーラン教授は原爆を開発した「マンハッタン計画」に参加した医師の孫だ。長崎と数奇な縁を持つ教授の呼びかけに、アメリカのカトリック信徒500人以上からの浄財が寄せられ、原爆で失われた鐘の復元が実現したのだ。

「80数年ぶりにこの地で2つの鐘が鳴るのはひとつの始まり」と語る森内さん
「80数年ぶりにこの地で2つの鐘が鳴るのはひとつの始まり」と語る森内さん

森内さんは「80数年ぶりに、この地で2つの鐘が鳴る。それはひとつの始まりでもある」と語る。

「希望のカテリの鐘」

復元された鐘を見物に訪れた人は「日本人であれアメリカ人であれ、やったことは賛成できないが、そのあとの人たちがこういうことを大事にしていくことが大切だ」と話した。

アメリカの学生も見物に訪れた
アメリカの学生も見物に訪れた

この日はアメリカのカトリック系の大学に通う学生たちも訪れた。学生は「互いに平和に近づけるよう努力し、いつか世界が一つになることを願っている」と話す。

鐘はネイティブアメリカンの聖人の名前と、平和の実現に向けて共に歩む証として「希望のカテリの鐘」と名付けられる予定だ。

8月9日午前11時2分、浦上の丘に2つの鐘が響く
8月9日午前11時2分、浦上の丘に2つの鐘が響く

一般公開は6月1日までで、その後、鐘は鐘楼に収められることになっている。2つの鐘が揃って鳴らされるのは2025年8月9日午前11時2分。浦上の丘に復活した2つの鐘の音が響くことになる。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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