夜が近づく中、山岳遭難の現場へ向かうのは北海道警察航空隊のヘリコプター。
先日、北海道警が公開した緊迫の山岳救助の一部始終です。
「蝦夷富士」とも呼ばれ、北海道を代表する山のひとつ「羊蹄山」で、5月13日、外国人観光客から通報がありました。

イギリス人の男性(30):
女性と2人で歩いていたが、寒くて避難小屋に行けない。

通報から約1時間後の午後7時すぎ、道警航空隊のヘリコプターが見つけたのは…遭難していたイギリス国籍の男女です。
軽装で…相次ぐ無謀な登山
5月でも雪が残る9合目、標高約1750m付近。

ヘリから降り立った隊員が目にしたのは、半袖シャツ姿の29歳女性。おなかも見えています。
救助を要請した30歳の男性は、薄いジャンパーにハーフパンツという軽装。足には擦り傷が見えます。

隊員:
Take a helicopter OK?(ヘリコプターに乗ります。OK?)
隊員に救助される男性ですが…寒いのか、手が震えているように見えます。
イギリス人の男性:
ソーリー…ゴメンナサイ。

ヘリの中で毛布にくるまれた2人。女性が寒さを訴え病院に搬送されましたが、症状は比較的軽く治療は受けなかったということです。
2人は警察の聞き取りに対し「寒さで動けなくなってしまった」と話しています。
羊蹄山の山開きは6月ですが、2人は入山届を出しておらず、登山の知識や経験もなかったとみられます。

無謀な登山者らによる遭難は後を絶たず…富士山では4月、中国人大学生が1週間に2度も救助要請するなど、防災ヘリによる救助が相次いでいます。
5月27日、「サン!シャイン」が登山口の1つ、富士吉田口を取材すると…。

工事の警備員:
はっきり言って全ての(外国人観光客の)方が“無謀登山”かなっていう感じですね。装備が軽装だとか…。
静岡県警によると、2024年の富士山での遭難者数は70人。うち10人が亡くなり、死者は2023年より5人増えました。
検討進む“救助有料化”
こうした中、問題となっているのが救助費用です。
富士山のお膝元、山梨県・富士吉田市の堀内茂市長によると「燃料費などを含めて60万〜80万円かかるケースも多々ある」といいます。
救助のたびに使われる税金。
そこで今、富士山の麓の自治体では“救助有料化案”が浮上しているのです。

静岡市の難波喬司市長は、救助は無料が基本とした上で、最近の登山事例はあまりにもひどく、そうした場合は有料にすべきと述べ…。

静岡県の鈴木康友知事は5月22日、県の防災ヘリが行う救助について有料化に向けた検討を関係部局に指示しました。
また、山梨県でも救助を有料とする条例案について、9月議会への提出を目指し検討が始まっていて、足並みをそろえる形です。
救助有料化案に富士山の麓の住民たちは…。

――(救助に)税金が使われることに怒りは?
富士吉田市民(60代):
ありますね。命を守る保険ですか…そういうものを考える中でしっかりお金を取って安全に登ってもらえたらいいと思います。

静岡県民(20代):
(救助を)動かした分だけお金をいただいても、それは やむを得ないことかなと思います。

5月27日の国会でも消防庁が言及。総務省消防庁の田辺康彦次長は“有料化”の課題として、「それぞれの地域によっての山岳の違い」「有料化した場合、救助要請をためらう可能性がある」ということで、「国が一定のルールを設けるのは難しく、各都道府県が課題を十分に整理し判断すべき」と述べています。
検討が進む救助有料化案。埼玉県ではすでに救助ヘリの有料化を導入しています。
どのような効果があるのでしょうか。
埼玉県 全国初の救助ヘリ有料化
2018年から全国初の救助ヘリ有料化を導入している埼玉県では、県内6カ所の山岳地域で防災ヘリ要請時に手数料が発生します。(山小屋運営・植栽・伐採など一部、手数料が除外される人も)
手数料は飛行時間5分ごとに8000円となっています。平均飛行時間は1時間程度で9万6000円かかるということです。

その効果はどうだったのかというと…。

有料化前(2013年~2017年)41件だった救助ヘリの要請が、有料化後(2018年~2022年)には24件と4割減っています。
有料化後に徴収した総額(2018年~2025年3月末までの34件)は217万6000円。
埼玉県の担当者は「お金を取りたいわけではなく無謀な登山を減らしたいという思いでできた」と話しています。
(「サン!シャイン」5月28日放送)