熊本市中央区で車をバック走行させ、女性2人をはねて死傷させたとして危険運転致死傷罪などに問われていた男に、熊本地裁は5月27日に懲役12年の判決を言い渡した。熊本地裁は「時速約70キロのバック走行は制御困難な高速度に該当する」として危険運転致死傷罪の成立を認めたが、その争点と判断について、取材を続けた記者が解説する。

裁判の争点は『危険運転』の成立の可否

Q:5月27日の裁判、熊本地裁はどのような雰囲気だったのか?

前田美沙希記者:
5月27日は傍聴を希望する人で長い列ができ、定員72人の法廷も満席となり、この裁判の注目の高さがうかがえた。

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Q:改めて、この裁判の争点は?

前田美沙希記者:
今回の裁判の争点は、被告の『時速およそ70キロでのバック走行』が危険運転致死傷罪の成立要件の一つ、『制御困難な高速度での走行』に当たるかどうかだった。

これについて検察は「時速およそ70キロという高速度でバック走行したことが制御困難になった原因で、危険運転致死傷罪が成立する」と指摘。これに対し、弁護側は「法律はあくまでも高速度が原因で車の制御が困難になった場合を想定していて、『バック走行』という特殊な運転によって制御できなくなった場合を『危険運転』として規定していない」と主張していた。

これについて熊本地裁は「法律が定める『走行』には前進とバックの両方が含まれている」とした。

「『制御困難な高速度』に該当」の判断

Q:時速約70キロが高速度と認められたのにはどのような理由があるのか?

前田美沙希記者:
自動車工学の専門家への証人尋問などから、裁判所は「バック走行でも一定の速度であればまっすぐ走ることもできるが、時速約70キロでは速度が速すぎて、車線を逸脱している。道路に合わせた運転ができておらず、『進行を制御することが困難な高速度』に該当する」とした。

Q:判決は求刑通りの懲役12年だった。量刑の判断にはどのような背景があったのか?

前田美沙希記者:
裁判所は「将来ある命を突然絶たれた被害者の無念は察するに余りある。遺族の悲しみは深く、無謀な運転は強い非難に値する。危険運転致死傷罪の中でも比較的重い部類」とした。

遺族の厳しい処罰感情も判決に反映されたものだと思われる。

(テレビ熊本)

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