2024年6月、熊本市中央区で車をバック走行させ、女性2人をはねて死傷させたとして危険運転致死傷罪などに問われていた男に、熊本地裁は5月27日に求刑通り懲役12年の判決を言い渡した。熊本地裁は「時速約70キロのバック走行は制御困難な高速度に該当する」として危険運転致死傷罪の成立を認めた。

争点は『危険運転』の成立の可否

判決を受けたのは、熊本市中央区島崎に住む元ホストクラブ従業員・松本岳被告(24)。

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松本被告は2024年6月15日の早朝、熊本市中央区細工町の県道で、酒気を帯びた状態で軽自動車を運転し、トラックに追突。

現場から逃走しようと、車の走行を制御することが困難な時速70キロ以上で約240メートルにわたって車をバックで走行させた後、歩道に突っ込み、熊本市職員の横田千尋さん(当時27)を死亡させ、横田さんの友人の女性にけがをさせた罪に問われていた。

時速70キロのバック走行は制御困難な高速度

5月19日から始まった裁判員裁判。松本被告は車をバック走行させ、横田さんら2人をはねて死傷させたことについて認めたものの、検察と弁護側の主張が真っ向から対立した。被告の『時速約70キロでのバック走行』が「危険運転に当たるかどうか」が争点となっていた。

5月27日の判決で熊本地裁の中田幹人裁判長は「バック走行でも一定の速度であればまっすぐ走ることもできるが、時速約70キロでは車の進行を制御できておらず、『進行を制御することが困難な高速度』に該当する」と判断。危険運転致死傷罪の成立を認め、求刑通り懲役12年の判決を言い渡した。

判決後、被害者参加制度を利用して裁判に参加していた、亡くなった横田さんの父・邦祐さんの代理人弁護人の籾倉了胤弁護士が取材に応じ、「適正な評価、法に従った評価が下された。いかなる処分が下ったところで、被害者にとっては終わりのない事件であり、法の中ではきょうが一区切りだが、被害者にとっては終わらない事件の一過程にすぎない」と述べた。一方、松本被告の弁護人は控訴について「被告と話をして検討する」としている。

亡くなった女性が勤務していた熊本市の大西市長は先ほど、コメントを発表。「どのような判決であっても失われた命が戻ることはなく、その悲しみは決して癒えるものではない。今回の痛ましい事件を決して風化させることなく、飲酒運転の根絶に向けた啓発活動を続けていく」としている。

(テレビ熊本)

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