2045年の福島県外での最終処分に向けて、理解は進むのか?中間貯蔵施設に保管されている「除染土」をめぐり、政府は総理官邸などで先行的に再生利用し全国に理解を広めたい考えだ。

進まぬ除染土の再生利用

総理官邸では5月27日、東京電力・福島第一原子力発電所事故後の除染などで生じた土壌の扱いをめぐり、2回目となる閣僚会議が開かれた。
政府は、2025年3月に復興再生利用と埋め立て処分の基準を策定。中間貯蔵施設に貯蔵されている除去土壌のうち、約4分の1にあたる放射能濃度の比較的高いもの(1kgあたり8000ベクレル超)については減容化のうえで県外最終処分、それ以外の放射能濃度の比較的低いものについては公共工事などで再生利用することを計画している。

2025年5月27日 閣僚会議
2025年5月27日 閣僚会議
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政府はこの基準をもとに再生利用を推進したい方針だが、現時点で明確な受け入れ先は決まっておらず、福島県内での実証事業のみにとどまっている。
閣僚会議では全国への安全性の発信と理解醸成のために、総理官邸や中央省庁など、政府が先行的に再生利用することなどを盛り込んだ基本方針を決定した。

除染土の再生利用の現状
除染土の再生利用の現状

一方で環境省は、先行利用の具体的な場所や規模感、時期は未定としていて、今後、2025年夏ごろまでに「当面の5年間ほどで何をすべきか」を示すロードマップを策定する方針。

2045年までに福島県外で処分

福島県大熊町・双葉町の一部に整備された中間貯蔵施設には、2015年3月から土壌の搬入が始まり、2025年4月末時点で、約1410万立方メートル、東京ドーム約11個分が運び込まれている。2025年度も、特定帰還居住区域などで実施される除染の土壌など26万4000立方メートルを搬入する計画としている。

福島県にある中間貯蔵施設
福島県にある中間貯蔵施設

県外最終処分をめぐっては、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法に「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」と定められていて、期限となる2045年まではあと20年。
環境省は最終処分の方法として4段階のパターンを提示し、埋め立てに必要な面積は一番少ないもので約2haにまで減らせるとしているが、放射性物質の濃縮の度合いなども含めての検討が必要で、肝心の最終処分先は決まっていない。

「嫌がるのでは?」県民の声

福島県外では初めてとなる除染土の再生利用の動きに、県民からは「安全第一、その辺がクリア出来ていれば」「使えなかった物を新たに使えるようにするのは、コスパ的にも良いのではないか」「東京の人たちは嫌がるのではないかと思う」との声が聞かれた。

負担を未来に残したくない

「2045年までに県外最終処分」の期限は守られるのか。中間貯蔵施設に土地を提供した住民は期待と不安を感じている。
福島県大熊町熊川地区の松永秀篤さんは、復興を前に進めるため、2013年に国に長年住んできた土地を売り渡す苦渋の決断をした。松永さんは「負の負担を未来に残したくないというのはあった。なるべく早く解消してやりたいという思いはあった」と語る。

かつての自宅の写真を見つめる松永さん
かつての自宅の写真を見つめる松永さん

松永さんは「福島だけの問題じゃなくて、全国・日本国民の問題だと思う。だけど、それをここだけに押し付けて何もやらなかったら、本当にこと進まないから」という。
今回の政府の基本方針について、一定の進展があったと評価する一方、「約束は約束。その約束があったからこそ、手放した人もかなりいる。最低でもそれだけは守って欲しい」と話し、残り20年に迫った期限を前にスピード感のある対応を求めている。

福島県で行われた除染作業(2012年撮影)
福島県で行われた除染作業(2012年撮影)

再生利用が進まなければ、その先の「福島県外最終処分」にはほど遠いと言わざるを得ない。
官邸や省庁での先行利用は場所や規模感を調整中とのことだが、全国に向けた情報発信につながることを期待したい。

(福島テレビ)

福島テレビ
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