東京の若者が、縁もゆかりもない山形・最上町に移住し、夢だったコメ作りに励んでいる。農業の担い手が不足する中、「ピンチはチャンス」と語る若者の姿を追った。

農業とは無縁の家庭で育った若者が田舎町に
5月に入り、山形の山間の集落にも田植えの季節が訪れた。
先輩に仕事ぶりが認められ、この日初めて直播きの最新機種の操縦を任されたのは、山形・最上町の農業生産法人に就職して1年の浅水規玖さん(19)。
2024年3月に東京都内の農業高校を卒業し、最上町にやってきた。

浅水さんは、東京・板橋区の出身。農業とは無縁の家庭で育ったが、「農家になるのが憧れだった。田んぼの作業をしている時が一番楽しい」と話す。

浅水さん:
祖父の家庭菜園を手伝った時に農業が楽しいと思い、農業高校に入りコメ作りに出会った。ネットでいろいろ調べて「最上町が良いな」と思い、ここに来た。

理念に共感し農業生産法人に入社
数ある農業生産法人の中で魅力を感じたのが「もがみグリーンファーム」。

浅水さんは、おいしいコメをたくさん作ることにとどまらず、機械化に先進的に取り組み、もみ殻から固形燃料を生み出す循環型農業の取り組みにも心ひかれ、会社の理念に共感して入社を決意したと話してくれた。

1年で自他ともに認められる成長ぶり
そして、もう一つ。
決断を後押ししたのは、法人の親会社「大場組」が空き家となっていた一軒家に住まわせてくれたこと。
縁もゆかりもない土地で暮らす勇気と力を与えてくれた。

浅水さん:
東京ではマンション暮らし。一軒家に憧れていたのでうれしかった。今夜はマッサマンカレー。
体力勝負の農作業。バランスの摂れた食事を心がけ自炊するその手は、日焼けをして黒くなっていた。

浅水さんは、「こっちに来てから色が黒くなった。家族にも『頼もしくなった』と言われてうれしかった。みなさんに良くしてもらい『会社にもっと貢献したい』という思いがある。恩を返していきたい」と、先を見据えて話してくれた。

専務の菅欣也さんは、「みんなで話しているけど1年間の成長ぶりがすごいと思う。1年目は人から言われたことしかやれなかったが、今年は仕事を任せられる。だってまだ19歳だよ」と、浅水さんの成長をうれしそうに語ってくれた。

1年前の自分の姿と重ねることで芽生える責任感
もがみグリーンファームは、2024年、耕作放棄地解消に向けた取り組みが評価され、「県ベストアグリ賞」を受賞した。
農家の高齢化・担い手不足・米価の高騰など、農業に従事する誰もが深刻な課題に直面しているが…。

浅水さんは、「ピンチはチャンスだとも思っている。農業の楽しさをPRして人手を増やしていくこと、“食”は大事だということもPRしていきたい」と、前向きに話す。

そしてこの春、浅水さんに後輩ができた。
新庄神室産業高校を卒業した新入社員の大久保匠真さんは、「右も左も、仕事の良し悪しもわからないので、浅水くんに面倒をみてもらっている」と話す。

後輩ができたことで自覚と責任がより明確になり、希望を胸に秘めながら、浅水さんは最上の豊かな大地で農家の道を歩んでいく。

(さくらんぼテレビ)