東京・品川区で女子中高生の理系進路を後押しするプロジェクト「Girls Meet STEM Summit」が開催された。参加企業は1年で100社超に拡大し、体験や講演を通じて職業イメージ形成を支援する。専門家は、早期のロールモデルとの出会いが進路選択に影響すると述べる。
理系進路を広げる女子中高生向け体験プロジェクト拡大
参加企業が1年で6倍以上になった、女性が理系分野に進む後押しをする取り組みが開催された。会場では、メモを取りながら真剣に話を聞く人たちの姿が見られた。

公益財団法人 山田進太郎D&I財団 Girls Meet STEM事業責任者・榊原華帆さん:
財団で現在行っている調査の中で、Girls Meet STEMに参加した方、していない方のデータを比べたときに、理系に対する意向度としては参加前後で13.5%向上しております。

東京・品川区で行われていたのは、山田進太郎D&I財団が主催する「Girls Meet STEM Summit 2025」だ。

STEMとは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の英語の頭文字で、女子中高生に理系に関心を持ってもらうため、企業や大学と連携し、体験ツアーを開催するプロジェクトだ。

プロジェクトは2024年発足し、参画企業は16社だったが、わずか1年で100社を超える112社へと規模を拡大している。

この日、全国から50社以上が集まり、2024年1年間のプロジェクトの成果や課題について、ディスカッションが行われていた。

STORES広報部・加藤千穂さん:
理系職種じゃなくても文系職種の人でも、技術を活用しながら働いていることを伝えたい。
京セラ総務人事本部 ダイバーシティ推進部・森麻里子責任者:
(文理選択で)そこで選んだら、一生決まっちゃうみたいに思っている子が多いんですけど、そこで一生決まるわけじゃない。その後もいろいろあるんだって。
三菱電機人材統括部グローバル人財部DE&I推進室・小川薫室長:
(女性技術者が)両親から「理系技術者は将来大変なんじゃないの?」みたいな心配をされたという経験を話してくれた。

1年間のプロジェクトを通して見えてきたのは、「理系が得意でないとなれなそう」、「理系技術者は大変そう」という女子中高生や保護者たちの、理系職への固定観念や不安だ。
企業と共に理系への関心を育てる
また、プロジェクトに参画している企業同士の交流会では、このようなやり取りがあった。

「なんせ人数がちょっと女性社員の…」
「そうですよね。なかなか抜けてきてもらうのは…」
「理系の中で女性が増えて、それによってイノベーションが生まれると思っていて」

こうした理系へのジェンダーギャップを少しでも解消していくために、参画企業は自分がやりたいことや関心のあることを見つける機会を、女子中高生に提供していきたいとしている。
明治 人事部・平田学 専任課長:
当社でも女性の活躍支援をどんどんやっていこうという中で、やはり(理系女性)社員が少ない。保護者の当日の参加をそこまで深く検討していなかったので、今日の話を聞きながら、持ち帰り検討する必要があると感じた。

freee 執行役員 辻本祐佳CCO:
思った以上に、社会の中でどういった状況があることを、今の中高生は知らないというのを改めて知った。本当の選択肢を渡していくのが、我々大人として、企業としての責任だなと。
主催する山田進太郎D&I財団の担当者は、次のように話す。
公益財団法人 山田進太郎D&I財団 Girls Meet STEM事業責任者・榊原華帆さん:
参画企業さま同士の交流の時間の中で、同じ課題認識を持って同じ取り組みをしている企業さんがこれだけいる。それを財団としても実感しますし、参画企業にとっても実感されたんじゃないか。
可能性を広げるきっかけの場は、今後さらに広がっていきそうだ。
日本のSTEM分野で女性が減る進路格差が課題
「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香 キャスター:
こういった取り組みが注目される背景は何でしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
日本において大学などの高等教育によって、STEM分野の女子学生の割合が世界的にも低いというのが背景にあります。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
STEM分野の女子学生の割合は、OECDの平均に比して38カ国中、日本は自然科学系の女子学生が27%、工学系が16%と最下位です。(出所:OECD “Education ata a Glance 2023”)

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
一方で、義務教育を修了した高校1年生の女子の能力を見てみると、科学的リテラシーはOECDの平均が485点であるのに対して日本は546点、数学的リテラシーはOECDの平均が468点であるのに対して日本は531点と、科学的にも数学的な分野においても、OECDの平均よりも高いポイントで、レベルは高いということがあります。(出所:OECD“ PISA 2022” 学習到達速度調査)
つまり、高校から大学、そして社会人にかけて携わる人数が減っていってしまうことが、最大の課題なんです。
職業を早く知る機会が女子学生の理系進路を広げる
海老原優香 キャスター:
能力とは別の、どういった理由があるからなのでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
女子学生にとって、将来、理系の分野の職業に結びつくイメージが持ちにくいことが、一番大きい原因だと思います。
いかに早く職業イメージを持てるかが大事になってくるんですが、文科省の調査による、理工系の分野に進路選択を意識した時期を見てみると、小学生が7%、中学生が20%、高校1年生が17%、高校2年生が20%、高校3年生が26%と、中学生の後半から高校になるにつれて、割合が広がってきています。(出所:文部科学省「女性理工系進学者等をめぐる状況調査結果」2023年)
つまり、このタイミングで理系の職業のイメージを持てるようになることが、重要だと思います。
海老原優香 キャスター:
今回のような、交流を持てる取り組みは役に立ちそうですね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
そうですね。こういった若い時期から職業のロールモデルをイメージできることは、非常に意義深いと思います。
文部科学省や東京都も、こういった機会を広げる努力をたくさんしているんですが、若い時期から職業に対するイメージを持つことによって、女子学生の将来の選択肢が広がるという展開に、期待したいと思います。
(「Live News α」5月23日放送分より)