ギャンブル依存症。特に「一度手を出すと抜け出せない」とされるオンラインカジノの恐ろしい実態を取材した。

オンラインカジノは違法の認識を

JR博多駅で行われた啓発キャンペーンで、ギャンブル依存症患者の家族らが特に深刻だと訴えたのがオンラインカジノだ。NPO法人『全国ギャンブル依存症 家族の会』理事の村田麿美さんは「私たちが問題視しているのはオンラインカジノ。違法です。だけどその違法ということを知らずにハードルが低いことによってどんどんはまっていく」とその危険を口にする。

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オンラインカジノを巡っては、警視庁がプロ野球の巨人に所属する2人の選手を5月8日に書類送検。球団は、2人が「オンラインカジノの違法性を認識しないまま興味本位で利用していた」と発表した。

政府内でも動きがみられた。自民党や立憲民主党など各党派の実務者が「今国会での法改正」を目指し、協議を実施したのだ。

与党と立憲がまとめた案では、オンラインカジノが違法であることの周知、徹底を図ることやカジノサイトの開設を禁止することに加え、サイトに誘導する広告掲載やSNS投稿などを禁止することが盛り込まれている。

最新の調査では、1年以内にオンラインカジノを利用したことがある人は、実に340万人以上にのぼることが判明している。

「寝る時間も惜しんでやっていた」

テレビ西日本報道部は、オンラインカジノの元利用者だったという30代の男性に話を聞いた。「オンラインカジノ以前にパチンコ、スロット、競艇、競輪もやっていた。どうしても寝ている時間が、ギャンブルできない時間。でも、その時間もやはりギャンブルやりたい。お金が欲しい。それが最初の第一歩だった」と元利用者の男性は述懐する。

元利用者の男性は、7年前に広告を見て軽い気持ちで利用を始めたという。100万円の「勝ち」を得た経験からさらにのめり込んでいった。

元利用者の男性は「仕事しながらもやってたし、寝る時間を惜しんでもやっていた。ずっと『ここに賭けろ』っていうのがあって、それをしながらお風呂に入ったりしてた。だから本当に何時間やってたか分からない」と話す。

ほぼ毎日、賭け続けた男性は、まさに、オンラインカジノ依存症に陥ってしまっていた。気づいた時には600万円の借金を抱えていたという。

「危機感を感じたのは、自分がどん底に立ってから。お金の面でどうしようもなくなったときに、やっと『やばい』と思った」と男性は振り返った。

元従業員「ちょっと“卑怯な手法”」

日本では違法のオンラインカジノに、なぜ人々は取り込まれていくのか? 海外のオンラインカジノ運営会社で働いていた経験がある日本人の男性は「規制がない日本だとオンラインカジノは、まあやりたい放題できる。それに、ちょっと“卑怯な手法”があって…」と話した。

日本人をカモにする、その卑怯な手法とは何なのか。「例えば利用者が10万円勝ちました。出金を要請します。カジノ側は、その出金をわざと遅らせるんですよ。『システム上のトラブルがあって』とか言って…」と話し始める元従業員の男性。

「3~4日経って、全然、お金が出てこないから『もうちょっと遊ぼう』となって、プレイヤーが、またその勝った10万円分で遊んで、どこかで勝ったお金以上に負けるまで、カジノ側は出勤を待って…」と元従業員の男性は打ち明けた。

利用者の勝ち分の支払いを遅らせたうえで、その間にさらに賭けた利用者が「負けるまで待つ」。つまり、利用者の「勝ち逃げ」を許さない、恐るべき仕組みだったのだ。

そしてオンラインカジノは、いまや国内で賭けられた総額が年間で1兆2千億円にのぼることが判明している。さらに支援団体の調査によるとオンラインカジノを利用したことがある人のうち実に3割が「1週間以内」に借金をしていたことが明らかになった。そもそも違法な上に、一度始めてしまうと生活が破綻する可能性が非常に高いのだ。

ただ一方で同じ調査で、50%以上が「違法だと知らなかった」と答えていて、そのリスクが、まだまだ周知されていないのが現状のようだ。

その手軽さと巧妙な罠で日本人が次々とハマっていくオンラインカジノ。少しだけ…、という軽い気持ちが人生を狂わせるかもしれない。

(テレビ西日本)

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