千葉・多古町の町議会で19日、議長を決められず、投票が21回続く異常事態となっている。町長派と反町長派が同数のためくじ引きなどで当選者を決めているが、当選しても両候補が辞退し、議長不在が長期化している。

町長派と反町長派が同数で決まらず

千葉県の成田空港の近くにある町の議会で、異常事態が続いている。13日から議長を決める投票が何度も行われているが、まだ決まっていない。

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議長不在が続いているのは、千葉県の北東部に位置する多古町の町議会だ。議員の中から議長を選ぶ議長選だが、前週だけでなんと21回も行われている。

背景にあるのは、14人という議会の定数だ。現在、町長派と反町長派が7人対7人の同数で、1回目から佐藤幸三町議と橋本孝之町議の2人が選ばれ続けている。

そのためくじ引きなどで議長の当選者が決まるが、その度にこのような事態になっている。

橋本孝之町議:
ただいま副議長より、議長当選のご報告をいただきました。一身上の都合により、議長当選を辞退させていただきます。

佐藤幸三町議:
一身上の都合、ならびに家庭事情により、議長職の当選を辞退させていただきます。

両候補とも、「一身上の都合」で議長になるのを辞退し続けている。

19日も町議会が開かれ5回投票が行われたが、議長は決まらなかった。これで、投票が行われたのは、26回にのぼることになった。

なぜ当選しても辞退し続けるか、地方行政に詳しい拓殖大学の河村教授に聞いた。

拓殖大学・河村和徳教授:
予算を決めるのも議会。町長をけん制したい人たちは議会の多数派は譲れない。議長を出すと少数派になる状態なので出したくない。(町長派も反町長派も)両方とも少数派になるのは嫌なので押しつけ合っている。

議長には、議案を採決する場合に投票権がない。そのため自分の側から就任すると不利になると判断し、相手側に投票しているとみられている。この異常事態に、傍聴に来ていた方からは様々な意見が出ている。

議長選の傍聴者:
双方とも真面目に町のことを考えていると思う。それぞれに理由があると思っていて、町の事を考えている結果だと思う。

議長選の傍聴者:
「今日こそは決まってくれる」と思って期待したが、期待外れの結果。どこまで続くか不安一杯。今、町はすごく大事な時期。議会の皆さんに一致団結して、町を良い方向へ進めてもらいたい。

町行く皆さんは、どう感じているのか聞いた。

多古町民:
意地の張り合いというか、町のためよりも自分たちの意地やメンツに囚われてやっているイメージ。古いですね。繰り返してます、昭和の議会が。

多古町民:
議会の中が二分されているような感じ。どっちも(議長に)就きたくない感じなんだろう。

では、当事者の方々はどう思っているのだろうか。番組は町議を直撃した。

佐藤利治町議:
なんとか決まればと…。

伊橋孝太郎町議:
数があるので、ここは譲れない部分もある。

萩原宏紀町議:
各々の譲れない考えがあると思う。こういう事態は、本当に町民にはお詫びしたい。

専門家が指摘「奇数にするなどの手を打った方が良い」

青井実キャスター:
多古町について、どう思いますか?

SPキャスター岩田明子さん:
これは庁内政局が最優先にされてるように見えますね。多古町にはたくさん課題も山積してると思いますので、やっぱりこの町民の生活を置き去りに見えてしまいますので、話し合いでしっかり早く解決してほしいと思います。

19日午後2時頃、議長を辞退した佐藤町議にも聞いた。辞退した理由は一身上の都合だったが「家庭のこと」とした上で、こう答えた。

佐藤幸三町議:
町民の皆さんには非常に迷惑と心配をかけて反省しているが、町の行政が上手く行くため、今、打開策を考えている。また明日何かしら出ていると思う。

一方、もう一人の橋本町議にもコメントを求めたが、無言を貫いている。

問題の解決にはどうすればいいのだろうか。専門家の河村さんに聞いた。

拓殖大学・河村和徳教授:
町民目線で考えると同時に、議会の信頼を損ねているという視点で、辞退をするのではなく、それは自分たちの都合。町民の為に、そして地方自治体全部の議会の為に、どこかで妥協してもらうしかないのでは。それと同時に、起こらないようにする仕掛けはできる。議会の定数を見直して、奇数にするなどの手を打った方が良い。

取材をした限りでは、町の皆さんは今の状況に不安を感じている様子だった。投票は20日も行われるということだが、異常事態はいつまで続くのだろうか。
(「イット!」5月19日放送より)

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