観客を魅了し続ける 沖縄観光のスター
美ら海水族館の名物といえば「オキちゃん劇場」。迫力満点の大ジャンプから愛らしいポーズまで、イルカたちの演技に観客席からは拍手と歓声が絶えない。

劇場の名前の由来となったオキちゃんは、その優雅な泳ぎと人懐っこい性格で半世紀にわたり観客の心を掴んできた。
沖縄県本部町にある美ら海水族館。青い海を背景にしたイルカショーには連日歓声が響きわたる。主役はミナミバンドウイルカのオキちゃん(推定52歳・メス)とムク(推定54歳・オス)。2025年5月1日、二頭はそろって飼育50年という大きな節目を迎えた。

観客席を沸かせるジャンプに子どもたちは目を輝かせる。「イルカが飛んでた!」「ジャンプがすごかった!」と無邪気に声をあげる姿に会場は笑顔で包まれた。
「いつ来ても胸を打たれる」「イルカが50年も生きるなんてびっくり」と来場者の声が続く。称賛の声に応えるようにイルカたちは水しぶきをあげて泳ぎ続ける。

ムクの復活ショー
オキちゃんとともに50年の歴史を刻むムクも注目の存在だ。新型コロナの影響で休止していた「ダイバーショー」は飼育50年を記念して5年ぶりに限定復活した。「昔からムクが大好きだった」「家族みんなで絶対に来ようと決めていた」と多くのファンが再会を喜んだ。
海洋博から始まったふたりの旅
オキちゃんとムクが沖縄にやってきたのは1975年。この年に開催された沖縄国際海洋博覧会がきっかけだ。当時から人懐っこい性格で人気者となりその後も水族館の顔として観光客を迎え続けてきた。

ミナミバンドウイルカとしての世界最長飼育記録を更新中の二頭。その偉業を称える記念式典には玉城デニー沖縄県知事も出席し「海とともに生きる沖縄にあって、二頭の姿は人々に笑顔と安心感をもたらしてくれる」と語った。オキちゃんには「沖縄県観光特別賞」も贈られた。

支え続ける飼育スタッフの情熱
半世紀にわたる飼育の裏にはスタッフの深い愛情と献身がある。美ら島財団の湧川理事長は「医療と飼育の両部門で細やかに見守り続けてきたスタッフたちの努力があった」と述べ、会場からは大きな拍手が送られた。
イルカ係長の比嘉克さんは「50年の節目を担当できたのは最も幸せ」と語る。健康管理では月に一度の血液検査を行い、毎日の食事はその日の体調に合わせて内容を変えている。
「言葉が交わすことができないからこそ、わずかな変化を見落とさないよう日々の観察が欠かせません」と比嘉さん。技術は代々引き継がれ、スタッフが交代しても変わらぬ愛情と責任がそこにある。

未来へ続く 美ら海の物語
365日休まず1日5回のショーに登場するオキちゃん。記念式典でもいつも通り元気な姿を見せてくれた。「お祝いできてうれしい」「50年は本当にすごい」とファンからの声が相次ぐ。
オキちゃんとムクはただの人気者ではない。沖縄の空と海、そして人々の心を映す存在だ。
これからも美ら海水族館の象徴として彼らはエメラルドグリーンの水面を優雅に泳ぎ続けていく。その物語は訪れるすべての人の心に刻まれていくだろう。
(沖縄テレビ)