2018年の西日本豪雨で氾濫した広島県東広島市の沼田川で小学生らがアユの稚魚を放流した。もともとはアユ釣りで名高い川が、豪雨でアユが育ちやすい環境が破壊されたが、地元の人々の努力で徐々に元の姿を取り戻している。
2022年から毎年放流
小学生らの手でバケツから勢いよく川に泳ぎだすアユの稚魚。

東広島市の沼田川で2022年から再開したアユの放流には特別な思いが込められている。

沼田川は2018年の西日本豪雨で氾濫し、広範囲に浸水被害をもたらした。
古くからアユ釣りで親しまれてきた清流だったが、豪雨で養殖していたアユは全滅。川の環境も大きく破壊され、川の中に砂が堆積したことで、アユが産卵できなくなってしまった。被災当時は、川がどこまで元の姿に戻るかを不安がる声もあった。
「もとの姿に戻ってきている」
豪雨災害から7年。沼田川漁業協同組合の後藤政則組合長によると、現在では、川はようやく、被災前の状態に戻りつつあるという。

「だいぶ元の状況に戻ってきた。西日本豪雨のあとは魚がいなくなったが、今年は姿を見かけるようになった」

沼田川では2024年からアユの餌となる「コケ」が増えたほか、川辺には「ヨシ」も生え、生き物が過ごしやすい環境が戻ってきていると後藤さんはいう。
「川の復旧工事が終わって2年目で落ち着いてきれいになった。カマツカという砂に潜る魚も今年はちょっと復活したようだ」
5,000匹の稚鮎を放流
川の姿がもとに戻りつつある中、8日に地元の小学生によって5,000匹のアユの稚魚が放流された。

この放流は2022年から再開され、今年で4年目。小学生らは、小さなバケツから、稚魚が川の中に元気に泳ぎだすのを見送っていた。

放流した小学生:
「いつまでも元気にアユが住める環境でいてほしい」
Q:アユはどんな風に育ってほしい?
「元気に育って、また沼田川に帰ってきてほしい」

沼田川漁業協同組合の後藤政則組合長は、「沼田川が西日本豪雨で被災したことを思い出してほしい。またアユの川だということも」とアユを通じて西日本豪雨の記憶が引き継がれていくことに期待していた。
(テレビ新広島)