長崎・佐世保市在住の中学1年生の女子選手が、スポーツの「近代三種」の世界選手権に出場する。夢はオリンピック選手。地方都市から世界に挑む女の子に密着した。
3つの種目を行う面白さに夢中
水泳、レーザラン射撃とランニング。異なる3つの種目で「スピード」を競うのが「近代三種」だ。この競技で世界選手権に出場する中学生が、長崎県佐世保市にいる。

数山琉唯(かずやまるい)選手12歳だ。
中学1年生の数山さんが近代三種を始めたのはわずか1年前。現在のコーチで、近代五種の元日本代表の斎藤鉄樹さん(大村市在住)が行った体験会に参加したのがきっかけだった。

1つの競技で3つの種目を行う面白さに夢中になった。数山さんは、「水泳が調子悪くても、陸上でカバーしたりすることができて楽しい」と話す。
強みは「泳力」伸びしろしかない中学1年生
近代三種は、水泳と射撃とランニングを交互に行う「レーザーラン」で構成される。

まずは100mを自由形で泳ぎ、水泳のタイム差でレーザーランをスタート。5発の射撃と300mのランを最大4セット行う。静と動の組み合わせで万能性を競う複合競技だ。

数山さんは2025年2月、世界選手権の最終選考会で13歳以下の女子の部で2位に入り、7月にはカザフスタンでのアジア大会に、12月には南アフリカでの世界選手権に出場する。

競技を始めてから1年で世代別の日本代表に選ばれた数山さん。強みは、生後数カ月のころから続ける「水泳」だ。斎藤コーチは「水泳の能力が近代三種の同じ学年でみても世界で戦える泳力がある」と評価する。
練習のためにトライアスロンの認定記録会にも出場している数山さん。現在、12歳以下の女子のランキング全国1位で、体力は誰にも負けない。
斎藤コーチは「陸上はまだ粗削りだが、体力があるのでダイナミックな走りで伸びしろしかない」と大きな期待を寄せる。
クラスでも人気者!
数山さんはこの春、中学生になった。毎朝7時に家を出る。

学校まで40分ほどかかるため、朝が早いのだ。近くの中学校には水泳部がない。世界大会への出場を目指していた数山さんは、自宅から遠くても水泳部がある学校への入学を決めた。朝も放課後も練習に打ち込んでいる数山さんにとって、登校の40分はリラックスタイムでもある。

入学から1カ月。クラスメイトに数山さんについて聞いてみると「全体的に明るいので引き寄せられる感じがする」「めっちゃ足が速い」「スポーツができるし優しいし、かっこいい。憧れの選手」と話し、クラスでも人気者だ。
隙間時間の自主練で鍛える
家に帰るとすぐにレーザー銃の練習をする。5m先から狙うの約6cmの的。トレーニング場所の確保が難しいため、的は自宅に設置した。

練習時間は朝、学校に行く前の少しの時間と、夜にも時間が取れたら少し行う。ランニングとレーザーは基本的に自主練習のみ。

学校生活との隙間時間を無駄なく使って技術を磨く。数山さんは「狙いすぎて他の選手と差がつくから、そこを自主練で頑張ってうまくなっていきたい」と意気込む。
佐世保から2人世界大会へ!
数山さんには佐世保から世界に挑む心強い仲間がいる。11歳以下の日本代表として同じ大会に出場する小学5年生の阿部克之慎さん(10)だ。

数山さんは、「世界大会に行くのは1人だったら迷ったりするけど、2人いるから自信が持てる」と話す。
ともに斎藤コーチのもとで練習していて、互いに高めあう存在だ。阿部さんは、「自分の強みは負けない心を持つこと」と言い、「外国人に負けないように頑張る」と話す。
斎藤コーチは、教え子2人が日本代表の報告を受けて驚いているという。「日本ではまだマイナーな競技なので、逆に世界で戦えるチャンスもある」と期待を寄せる。
数山さんが住む佐世保のような地方都市の選手は、都市部より移動の苦労が多い。大会に出場する場合も渡航費や滞在費などを各自で負担しなければならないが、両親は企業を回って協賛を募ったりと、世界に挑戦する娘を後押ししている。

母の有里さんは「“西の果てから日本代表がいるなら応援するよ”と多くの人に声をかけてもらっている。それを背負って行くのも本人に責任感ができていいのではないか」と話す。
数山さんも「地方都市から世界大会へ出場する人がいないから、自主練とかちょっとしたことを頑張って、“日本ってすごいところなんだぞ”とみせつけたい」と意欲を見せている。
夢は「オリンピックで活躍すること」
近代三種に「フェンシング」と「オブスタクル」という障害物レースを加えたのが、オリンピック種目になっている「近代五種」だ。数山さんはすでに先を見据えていて、「近代三種でいけそうだったら五種にもいきたい」と話し「オリンピックに出て活躍したい」と語る。

「もっと練習して世界でも輝ける選手になりたい」。
佐世保から世界へ。数山さんは夢の実現に照準をあわせている。
(テレビ長崎)