長崎市の諏訪神社は2025年、鎮座から400年を迎えた。記念すべきこの節目の年に、氏子の1人が長崎くんちに向けて神社に奉納する品を製作している。伝統の職人の技が光っている。
イメージ図で作り上げる「輿(こし)」
毎年10月7日に開幕する、諏訪神社(長崎市)の秋の大祭「長崎くんち」。

初日の「前日(まえび)」に行われる「お下りの神事」では、3体のご神体を神輿でお旅所に移す。その列に加わっているのが、宮司が乗る「輿(こし)」だ。
江戸時代の行列を再現しようと、2023年に製作された。鎮座400年となる2025年、氏子の1人が新たな「輿」を作っている。

高浜康弘さん78歳(高ははしごだか、浜はまゆはま)。この道60年の家具職人だ。製作にあたり、完全な設計図はない。高浜さんが思い描くイメージ図に則って作り上げている。

「輿」は全長3.8m、幅1m、高さ1.8m。職人の技が随所に凝らされている。こだわりは屋根のそり。美しく曲線を描いている。

屋根を支える骨組みが、最も苦労した部分だと話す。
材質にこだわり 軽量化を実現
製作期間は約4カ月。2025年1月から仕事の合間を縫って作り始めた。諏訪神社から「軽量化」の要望を受けたため、「軽さと強度の両立」を追求した。

持ち上げてみると想像以上の軽さだ。1基目は100kgあるが、今回は桐と杉を使うことで、80kgを実現した。

新しい輿の出来栄えを諏訪神社の権宮司に見てもらうと「すばらしい技。神様も喜ぶと思う」と、完成を待ちわびている様子だ。
「お諏訪さん」への恩返し
高浜さんは踊町のひとつ、麹屋町(こうじやまち)生まれで、これまでくんちに6回出演している。

町内の職人仲間とともに川船の改修や修繕も担ってきた。輿の完成まであと一歩。高浜さんは「77歳の喜寿の時に何か記念に残ることをしたい」と思っていた。

諏訪神社の鎮座400年ということを知り、輿を作ることを思い立ったという。高浜さんがくんちに携わって20年、輿の奉納には「お諏訪さん」への恩返しの思いが込められている。

高浜さんは自身が手掛けた輿が行列に加わる様子を早く見たいと、今から本番を楽しみにしている。
(テレビ長崎)