那覇で蘇った島の味

南大東島で生まれ島の人々に長年愛されてきた「大東そば」。かつて那覇市にも店舗があったがコロナ禍の2022年に惜しまれつつ閉店。そんな「大東そば」が2023年11月に那覇市・国際通りの一角で復活を遂げた。知る人ぞ知る魅力に迫る。

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復活の立役者は元ラーメン店勤務の又吉理人さん。大東そばの味に魅了され創業者に直接申し出て暖簾(のれん)を引き継いだ。

「大東そばは太く縮れた麺でもちもちした食感が特徴です。スープは豚、鶏、カツオを使った白濁のスープになっています」と又吉さんは語る。

オープン直後から店は連日満席。那覇にいながらにして「島の味」が味わえると評判を呼び、観光客だけでなく南大東島出身者も足を運ぶ。

麺に込めた創業者の情熱

このそばを生み出したのは南大東島出身の伊佐盛和さん。35年前「島でしか味わえない麺を作りたい」という思いから大東そばの開発が始まった。

食塩の代わりに海水を煮詰め枯葉を燃やした灰から作った灰汁(あく)を使い麺を練り上げる。「時間も手間もかかりましたが唯一無二の麺ができたんです」と盛和さんは語る。

より多くの人に味わってもらいたいと2000年に那覇市に店舗を構えた。

厨房を任されていたのは盛和さんの息子・伊佐譲二さんだった。

「一度食べたお客さんがまた来てくれるような、地元に根づいた店にしたい」と語る譲二さんのインタビュー映像が沖縄テレビのアーカイブに残っている。

もちもちの麺と白濁スープという特徴あるそばは話題を呼び、南大東島から遠く離れた那覇の人々にも愛される存在となった。

コロナ禍で閉店 そして復活へ

しかし順風満帆とはいかなかった。新型コロナの影響で2022年に那覇市の店舗は惜しまれつつも閉店を余儀なくされた。

「まさか閉めることになるとは思わなかった。ショックでした」と創業者の伊佐盛和さん。常連客からも「那覇で食べられなくなるのは寂しい」という声が届いた。

そんななかで動き出したのが又吉さんだ。

元々の店によく通っていた又吉さんは空き店舗を見て「ここでやりたい」と強く思い創業者の盛和さんに店の再開を申し出た。

「彼の熱意に感動しました。この人なら任せられると思った」と盛和さん。こうして大東そばの復活プロジェクトが本格的に動き出す。

一年がかりの修行と継承

現在、伊佐譲二さんが那覇で大東そばの麺を製造している。又吉さんは指導を受けながら麺作りとスープの仕込みを一から学んだ。

「大東そばは麺の扱いがとても繊細。そこが一番大事です」と譲二さん。

又吉さんにとってラーメンとそばは似て非なるものだった。「スープの温度や出汁のバランス、麺のゆで加減などすべてが独特。何度も試作してようやく納得のいく味にたどり着きました」と話す。

一年間の修行を経て2023年11月、国際通りにほど近いパラダイス通りに「大東そば」は再び暖簾を掲げた。

島の風を感じる味を再び那覇で

「島に帰らなくても大東そばが食べられるのが何よりうれしい」と語る島出身の客。

「南大東島の風を感じながら食べられる。もっと多くの人にこのそばの良さを知ってほしい」と語る常連。

「父が始めたそばがソウルフードとして人々に愛されているのを感じる。作り手の思いも一緒に受け止めて、また広げていけたら」と伊佐譲二さんも笑顔を見せる。

「伊佐さんの味を受け継ぎながら丁寧に作っていきたい」と又吉さんは胸を張る。

多くの人の思いが繋がりふたたび町に戻ってきた大東そば。島の味はこれからもゆっくりとやさしく、街に息づいていく──。

(沖縄テレビ)

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