鹿児島県鹿屋市の「ダマスクの風」は、無農薬栽培にこだわる園長、門倉美博さんが手掛けるフラワーガーデンだ。約100種類の草花が咲き誇るこの場所は、自然の力を活かした独自の園芸哲学で、多様な生態系を育んでいる。訪れる人々に癒しと感動を届けるこの花畑は、地域を超えて多くの人々を魅了し続けている。
新緑の山々に囲まれた色とりどりの花畑
鹿屋市・高隈連山の裾野に、青や黄色に染まる一画がある。約100種類の草花が3ヘクタールの敷地に広がる「ダマスクの風」と呼ばれるフラワーガーデンだ。平日でも約100人が訪れる人気スポットで、入園料はわずか300円。

このガーデンを14年前に開園したのは、門倉美博さん(77)だ。かのやばら園(鹿屋市)の名物園長として知られた門倉さんは、鹿屋市を退職後、理想の花畑を実現させるため、仲間と共にこのフラワーガーデンを立ち上げた。

無農薬栽培へのこだわり
門倉さんの最大のこだわりは、無農薬栽培だ。開園以来、一切の農薬を使用していないという。
「ここを立ち上げるとき、『絶対に薬はかけないよ』と。そうしたら結構できるもんだね。天敵ができて、またそれを食べる虫が来る。だから割と面白いんだ。そして雑草がないとだめ。きれいに草を取ると虫が全部本体に上がる」と門倉さんは語る。

この独特な園芸哲学が、多様な生態系を育む美しい花畑を生み出しているのだ。
困難を乗り越えて
「ダマスクの風」の歴史は決して平坦ではなかった。オープンは、東日本大震災の発生で日本中が沈んでいた2011年の年末。当初は現在の広さの6分の1ほどだったが、花の美しさは当時から折り紙付きで、癒やしを求めて県外からもお客さんが訪れていた。

その後徐々に規模を拡大していったが、コロナ禍や門倉さん自身の脳梗塞など、様々な困難に直面してきた。
しかし、「癒やしを届けたい」という思いは変わらず、門倉さんは愚直に花を咲かせ続けてきた。現在も左足に麻痺が残るが、その情熱は衰えていない。
見頃を迎える花々
2025年4月、「ダマスクの風」ではポピーが見頃を迎えていた。約1万本が一斉に咲く姿は圧巻の一言。さらに、ゴールデンウィークの頃には2万株のネモフィラが満開を迎える予定だ。


来園者の声からも、この花畑がもたらす感動が伝わってくる。「きれいですね、気持ちいい」「100枚ぐらい撮りました。"映え"ました。すごく。すごくきれいで疲れが飛びました」と、訪れた人々は口々に喜びを表現している。

癒やしの場所としての役割
多くの来園者に幸せな気持ちを届ける「ダマスクの風」。門倉さんは、その様子をどのような思いで眺めているのだろうか。
「癒やしを求めて来られれば、それで最高だと思います」と門倉さんは微笑む。
地域の人だけでなく、県外から訪れる人々にも癒やしを提供する「ダマスクの風」。無農薬栽培にこだわり、困難を乗り越えて花を咲かせ続ける門倉さんの姿勢が、この美しい花畑を支えている。鹿児島の自然と人の営みが織りなす、心温まるスポットとして、これからも多くの人々を魅了し続けることだろう。
(鹿児島テレビ)