26日、栃木県那須塩原市の東北自動車道の上りで、3人が死亡する痛ましい事故が発生。原因は“逆走車”でした。

東北自動車道の東京方面へ向かう上り線で、突如、逆走を始めたという乗用車。
逆走車と接触した車を運転していた男性は、当時の状況について「正直、何が起こったのか分からなかった」と話します。

逆走車と接触したドライバー:
私が走行車線を…大型トラックの後ろを走っていたんですが、突然前を走っていたトラックが車線変更しまして。おそらく(逆走車は)ブレーキはかけていなかったんじゃないかなと思います。私のほかに、助手席にも(人が)乗っていたので、本当にタイミングが遅かったらどうなっていたか分からなかったですね、私も。

男性によると、トラックの後ろを走行していたところ、突然、前方のトラックが右に車線変更し、目の前に逆走車が現れたといいます。男性はよけきれず、逆走車と接触。ところが、逆走車は止まることなく、そのまま走り去ってしまったというのです。

その後、逆走車は別の車と正面衝突し、逆走車を運転していた40代男性と、衝突された車の男性が死亡。
事故によって発生した渋滞により、大型トラックなど6台が関係する追突事故が起き、追突された車に乗っていた女性が死亡しました。

逆走車は、最初に警察に通報があった地点から正面衝突するまで、少なくとも3kmにわたって逆走したとみられます。

事故直後の様子を目撃した人物は…。

事故直後を目撃:
車の壊れ方がちょっと異常だったので。普通じゃ考えられないくらいグチャグチャになっちゃってる感じで…。事故は1つだけだと思っていたら、その先にもう1つ事故があって「なんだこれ?」っていう状態なので、フロント部分は完全に原型をとどめていなかったと思うので。

警察は、逆走車が最初に車と接触した場所から100mほど離れた、黒磯板室インターチェンジから侵入した可能性もあるとみて、捜査をすすめています。
近隣住民によると、黒磯板室IC付近は以前から事故が多発していたといいます。

近隣住民:
去年の8月にも、逆走。逆走車とぶつかって。黒石板室ICは…分かりづらいのかな。
止まらぬ“逆走”による事故 対策は?
運転手が亡くなっていることもあり、事故の詳しい状況は分かっていませんが、元衆院議員の佐藤ゆかり氏は、逆走車が進入したとみられる黒磯板室ICの進入口が分かりにくい点に触れ、対策の“欠け”を指摘します。

元衆院議員 佐藤ゆかり氏:
通常、逆走というのは、高齢者の方々の運転ミスで逆走が起こることが多いと聞いているんですよね。ただ、今回の事故は40代の方が運転していたということで、明らかに運転操作ミスというよりは、視認性とか「進入禁止」(という看板など)では足りなくて、やはりもっと大きな、明らかに分かるような、大きな看板で「進入禁止」とつけるとか、お金をかけなくても、もうちょっとできることが日ごろからあると思うんです。そのあたりの対策が少し欠けていたのかと思いますね。
スペシャルキャスター カズレーザー:
もうひとつは、逆走が今回の原因なんですけど、その後で玉突き事故も起きているじゃないですか。それを防ぐ、玉突き事故は他の事故が原因でも起こり得ることなので、それを防ぐシステムをもう少し作ってほしいなと。

黒磯板室ICには複数の標識が設置され、道路も高速に乗る道は赤色、高速から降りる道は青色に塗り分けられていました。しかし、灯りも少なく、実際に夜間走行時の映像を見た交通事故鑑定人の中島博史氏は、その危険性を指摘します。

交通事故鑑定人 中島博史氏:
(周囲が)暗くなったときに、人間は色の識別能力が落ちるので。色分けしてあっても、もっと夜でも見える感じかなと思っていたのですが、映像で見ると、青と赤なので本来なら対比した色のはずが意外と見え分けづらいなと覆います。

――標識が多すぎて逆にわかりにくい可能性は?
とにかく気付かせなくてはということで、たくさん標識を立てているのだと思うのですが、日本では物理的に入れなくするという方法がなかなかとれないので、どうしても視覚にたよって何かを知らせるとすると、標識が増えてしまいがちかと。

――海外では踏むとパンクするというものもありますがなぜ日本では導入できない?
トラフィックトラップと呼ばれるものもあるのですが、日本だと個人の財産を守らなくていけないということが意識として強いので、間違えただけなのに完全に車が走れないようになる、壊してしまうのは与える損害が大きすぎると。そこは社会的なリスクと、それに対してのコストの感覚なのでしょうが、日本は個人の財産を保護する意識が強いので、なかなか物理的な障壁というのが付けにくいようです。そのあたり、優先度の問題が出てきてしまっているのだと思います。ここだけで、逆走が起きるわけではなく、対策するとなったら日本全国、数多くを一気に対策しなくてはならないので難しいのではないかと。

――全部一気にやらないといけない?
どこで発生するか。発生しやすい構造なので、どこで起きるか分からないですから、可能な限り速やかに切り替えをしないと、逆に混乱を招いてしまう可能性があるので。
もし逆走車を見かけたら?
高速道路では、2日に1回の頻度で「逆走」が発生しているといいます。もし自分が逆走車に遭遇してしまったらどのような対処をすればいいのでしょうか?

中島氏によると、正面から逆走車が来た場合、まず車線変更を行い、ゆっくり減速(急ブレーキは激突の恐れ)、回避後に110番に通報します。
通報すると、高速道路の掲示板に逆走車の情報が表示されます。

もし、自分が誤って逆走してしまった場合は、車道でもいいのですぐに車を停止させ、ハザードやヘッドライトを点灯、クラクションを鳴らし続けるなど他の車が避けてくれるのを待ちます。その後、路肩へ移動して、外に出て、ガードレールの外に退避してください。

交通事故鑑定人 中島博史氏:
(逆走しているとき)自分が正しいつもりでいると、それに逆らう指示や標識があっても、なかなかそれを認識しづらい。特に感情的に高ぶっている場合や疲れている場合というのは、自分が間違っているかもしれないという可能性を考えたり、あるいは他のところに気を配る余裕が減ってきてしまうので。いわゆる「余裕を持った運転をしましょう」というのは、心理的な余裕を持ってという意味も含めて、焦らず、視野狭窄(きょうさく)を起こさないような状態で運転するということが大事です。
(「サン!シャイン」 4月28日放送)