ゴールデンウイークを前に気になるガソリン価格。石破首相は政府として1リットル10円の値下げをすると表明した。自動車ユーザーからは期待が高まる一方で、販売店には戸惑いの声も上がっている。

値下がりの実感「そんなに…」
4月24日、福井県越前市のガソリンスタンド林石油店を訪ねると、レギュラー価格が1リットル186円と、前週よりも4円値下がりしていた。だが林直樹店長は「感覚的には150円、160円台にならないとガソリンを入れて乗ろうと思うようにならないのでは」と話す。
自動車ユーザーも「少し下がったかなと思うけどそんなに変わらないかな」「上がり始めてからあまり気にしなくなった」という反応。あまり値下げの実感はないようだ。

エコノミスト永濱氏「補助金やめても下がる」
遠出が増えるゴールデンウィーク。今後のガソリン価格について第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストに聞いた。「既に原油の先物価格がトランプ関税発動以降、急激に下がっていて、為替も1ドル140円台前半まで円高が進んでいるので、今後はガソリン価格が下がることが確実視されている。ゴールデンウィークのガソリン価格は下がる。補助金をやめても下がる」と断言する。

原油価格が下がり補助金がゼロに
ガソリン価格の高騰を受け、国は一定水準に抑えようと、2022年から補助金制度を続けていた。調整の目安は1リットル当たり185円。この基準を超えた場合、国が石油の元売りに補助金を支払うことで価格を抑えていた。ガソリン価格は1~2週間前の国際的な原油の先物価格が反映される。国際的に原油価格が下がり、国内での価格の見通しが基準額を下回ったため、4月17日には補助金がゼロに。ガソリンの価格も4週ぶりに下がった。
しかし自動車ユーザーからは「ぶっちゃけ高い」「若い時にガソリンが安かったのを覚えているから…いまはとても高い」と嘆く声が。

石破首相の“10円値下げ”方針
そんな中、石破総理は4月22日、ガソリン・軽油の価格を1リットル当たり10円引き下げる方針を表明。1カ月程度の周知期間を経たうえで「5月22日より実施する」とした。価格の引き下げは段階的に行われる予定で、5月22日から6週間をかけて、1リットル当たり10円の支援を行うとしている。
これに対して自動車ユーザーからは「連休前に値下げしてほしい。それに、10円下がっても実感はない。30円、40円下がって150円台になれば安くなった実感が得られる」という声も上がる。

取材した林石油も価格設定のタイミングには慎重な様子だ。仕入れ価格や在庫との兼ね合いもあり「すぐに10円は下げられない」という。林店長は「初めは5円の値下げから。国としては10円と言っているが、一気に10円も下げると下がって良かったという人もいれば、きのう入れたのに…という人も出てくる」と頭を悩ませる。

暫定税率も論議に
ガソリン価格を一定にするための「補助金制度」と、石破総理が打ち出した補助金を使った「10円値下げ」の2つの政策。
石破首相が表明した段階的な”10円値下げ”に対しては、野党は一斉に批判の声を上げている。国民民主党は「みみっちい」と表現し「やるなら減税」と主張。立憲民主や日本維新も「元々のガソリン代に上乗せされている25.1円の暫定税率の廃止こそが筋」としている。

新たな補助金での“10円値下げ”という政策の実効性だけでなく、ガソリン税や暫定税率のあり方そのものが問われそうだ。